第9話 読み書き出来ない世界でウチは踏み出す
ウチは中学3年生になった。担任は3年連続同じになった。9クラスもあって担任がずっと同じとは…イマイチ新生活始まった感が無い。
いじめっ子の奴とはまた同じクラスになってしまった。確率は仕事をサボっているのだろうか。
相変わらずいじめはスタートするが、ウチにはそんな事よりも大事な事があった。
もう去年のような敗北は許されない。百人一首を更に極める必要がある。
ウチは母親に初めて百人一首で敗北した事を伝えた。
すると母親から、競技かるたというものがある事を聞いた。
そして偶然にも、練習場所はウチの最寄り駅から隣。これは行くしかない。
ウチはすぐに連絡し、通ってみる事にした。
会場に着き、扉を開けた瞬間、ウチは息を飲んだ。
ウチが今までやっていたのは何だったんだと思わせる程の速さ、やや重い張り詰めた空気、 誰もが真剣な眼差しで試合に臨んでいる。
中には小学校低学年の子までいた。その子もウチの数十倍速い。
空気に圧されつつも、ウチは入会を希望した。強くなりたい確固たる意志があった。
負けた悔しさを取り返したい。ウチの居場所を再び手に入れる。何よりの優先事項だった。
そんな事を思いながらフッと横を見ると、見たことある影が通った。
まさか……ウチが最初によぎった直感は正しかった。
間違いない。ウチをボコボコにしたあの少女だ。
互いに挨拶はしなかった。別に仲良い訳でも、話すことがある訳でも無い。
あの少女があんなに強かった理由が分かったウチは少しホッとした。ここで練習したからなんだ。
練習して、ウチも高みに登ってやると更に強く誓ったのだ。
ウチは毎週日曜日、かるた会に通って練習した。
毎週 毎試合 色んな人にボコボコにされながら、経験値を積んでいった。
だが、ウチには百人一首大会よりも先に迎える超重要イベントがある。
高校受験だ。
高校では競技かるたを本格的にやりたい!ウチはそう思っていた。
ウチは早速、県内でかるた部がある所を探した。
あまりにもマイナー過ぎる部活なためか、公立で見つかったのは僅か4〜5校ほどだった。
まずその内の2校はとんでもなく偏差値が高かった。
ウチの頭ではとてもじゃないが無理だった。
残り3つの内、1校は家から距離が遠かったので、通うのは難しいと判断。
残ったのは2校。2つとも1時間あれば通える圏内だ。
問題はウチの偏差値。当時のウチの偏差値は50~51程度。すぐさま2つの高校の偏差値をチェックした。
A高校→偏差値44。B高校→偏差値58。
世の中「丁度いい」という言葉は所詮感覚の域を出ないのかもしれない。
「真ん中無いのか真ん中は……」
ウチはため息をついた。
高校見学にも行き、しっかり決めることにした。
部活体験、文化祭、説明会、色々と見て決心した。
「B高校に行く」
部活実績、学校の雰囲気、何より先輩たちが優しかった。
ウチはキツめの受験勉強に挑む選択をした。
科目は5教科、英語や国語でどれだけ削られるか……。
しかし、ここでウチにラッキーな事実が舞い降りる。
何と、ウチの県の高校入試は、マークシート式の4択問題だったのだ。
これなら行けるかもしれない!!
例え書けなくても、感覚で答えさえ導き出せれば、4つの中から探せば良い。
例え文章題が読めなくても、選択肢を見れば、何の話をしているか手繰り寄せる事が出来るかもしれない。
更にラッキーな事実な飛び込んだ。
B高校は、5教科の中で、1番点数の高い科目を重視して評価するらしい。
つまり、多少国語や英語が足を引っ張っても、ウチの場合、得意な数学でカバー出来れば、可能性は大いにある。
ウチのモチベーションは上がりまくった。
そして必死に勉強し、時はあっという間に過ぎ、ついにその時は訪れた。
まずは前期入試。成績表の照らし合わせと、面接のみの試験。
ここで受かれば筆記試験を受けずに済む。
だが結果は不合格。そもそも成績はほぼオール3。
何となく分かっていた結果だった。
後期試験に望みを繋げる。
ウチは毎日毎日歪んだ文字と戦い続けた。
読解力が無さすぎると酷評されたり、そもそも何て書いてあるのか分からないとも言われた。
だが関係ない。本番は4択なのだ。
ウチは試験に挑んだ。
発表の1週間がとんでもなく長く感じた。
そして運命の合否発表。
受かっていた。
合格したのだ。思わず肩の力が抜けた。
ウチは第1志望校に合格したのだ。
次の日からウチはウッキウキで登校した。
しかし、時間間もなく、すぐに百人一首もやってきた。
3年生は卒業式練習があるので、百人一首大会が1ヶ月早く行われる。
今年はかるた会に入って修行もした。あの少女にも負けていられない。
より一層強い気合いが入った。
ウチは格段にスピードが速くなっていた。去年とは比べ物にならない。
取って取って取りまくった。
そして結果は……
優勝。
ついに果たした。1年生の頃から夢見た事が。
努力が実り、ウチは心の中でガッツポーズをした。
そしてあの副産物もついてきた。
いじめっ子がその結果を見て、いじめなくなったのだ。
最後の1ヶ月だけ、ウチは平和に過ごせた。
ウチは改めて百人一首に居場所を感じ、
そして、高校のかるた部で更なる強さを手に入れると誓い、中学を卒業した。
ただでさえ読みづらい文が長くなり申し訳ありません。
次回からは高校生編になります。
かるたが多めになってきます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます