第3話

サスペンスドラマの主人公のように『殺人』の二文字が頭をよぎるが、実際にはそんな事件性などなく、何か不慮の事故や偶然が重なって起こった悲劇なのかもしれない。

「死」に慣れた看護士達の対応は、いささか冷たくドライには感じられたが、特段、不自然な様子も見受けられなかった。



目の前の失われた命が…………

只々、悲しかった。



(………もう一度、会いたいよ

お祖父ちゃん………………)



高齢とはいえ、祖父の死を受け入れ難く、

涙ぐんだ私だが…………

ふと、奇妙な事に気付く。


外れた呼吸器の近くに………

黄ばんだ『歯』が落ちていたのだ。

本数は少なくなっているが………

それは祖父の歯と同じ色だった。


開ききった闇のような祖父の口腔内にギョッとする。

やはり、死ぬ時は余程、苦しかったのだろうか…………?

意識なく、身動きも取れないはずなのに…………

それでも、最期の最後…………

祖父は不自由な体で暴れたのかもしれない。



抜け落ちた歯は………

祖父の苦しみの象徴にも思えた。





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