第4話

事件性が、まるで無い訳ではなかったが、

誰も、その事には触れない。

只々、悲しみを押し殺した空気だけが漂っていた。



「……………う゛ぅ゛……っ」



呻き声のようなものが聞こえた気がして……

私は、ハッとする。

祖父の開いた口の中から、その音が聞こえたので、一瞬、私は祖父が生き返ったのではないかと思ってしまった。



…………だが、当然そんな事はなく…………

周りを見回しても、誰も、その声を聞いていない様子だった。

――――やはり空耳なのだろう。


それに、何より、あの声―――――


か細い呻きとはいえ、祖父の声ではないような気がする。


もっと、若い…………


女性の声だったような―――――。




少し、不気味な気持ちを抱えながらも、

誰にも言えぬまま、私は葬儀に参列した。





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