第5話

  「親父、合格かどうかを決めるのは親父なのに、審判っているの?」

  「何言ってんだ、俺や相手が斬られるかもしれんだろ?」

  「あんた当たんないし、仕掛けないじゃん。」

  「ま、そうなんだけどな!くはははは!」

  笑い方悪役かよ。しかも、性格悪いし。

  「てことで、審判よろしく!」

  「はいはい。」

  真面目かと思えば、陽気だし。性格悪いし。なんなのこの親父!

  「話も終わったところで、よろしく、愛璃君。」

  「よろしくお願いします。」

  えっ、定番のテレパシーからのツッコミ来るかと思ったけど、来なかったよ?

  「刀真、今変な事考えなかったか?」

  「ううん、別に。」

  「そうか、じゃ、合図頼む。」

  今じゃない!この親父、絶対変だよ!

  ま、いっか。今は試合だし。二人も位置に着いたしね。

  「準備はいいね。試合、開始!」

  「たっ!」

  合図と同時にあいちゃんが飛び出す。

  「『十文字』」

  親父が上に飛んで躱すと、着地を狙ってすかさず、

  「『周閃』」

  「おっと。」

  上手い!なるべく背中を見せず、タイミングを被せて体勢を崩した!当然、その隙を見逃すはずが無く、

  「『疾風』」

  これは入っー

  「『一閃』」

  親父が技を使った!まあ、親父がただで食らうはずがないか。だって、攻撃を食らってやるって言ってないもの。

  「…」

  お、あいちゃんが下がった。

  「愛璃君、君の技を見せてくれ。」

  「分かりました。」

  すると、はる姉同様、空気が一変する。

  「玖珂家 愛璃流 『流舞』」

  あいちゃんはそう言うと、小太刀を振りながら、いや、体ごと揺らしながら、高速で近づき、

  「ぐうっ!」

  親父に襲いかかる。親父の周囲全方位から斬撃が来るため、親父は逃げるに逃げられず、

  「愛璃君合格!」

  と、言った。

  「恐ろしい技を身につけたな、愛璃君は。」

  「ありがとうございます。」

  すごいなぁ、二人とも。完成度高いし。俺も負けてられない。

  「最後は刀真だな。だが、その前に休憩させてくれ。」

  休憩をさっき取らなかった親父が休憩?疲れたのか?それとも俺だけ少し違うのか?


  その疑問は、嫌な形で俺を迎える事になる。

 

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