第4話

  「まずは、千春君だな。よろしく。」

  「よろしくお願いします。刀理様。」

  二人は固い握手を交わすと、指定の位置に着く。ちなみに、審判は俺だ。試合は重傷を負わないように木刀を使用している。

  「指定の位置に着いたな。試合、開始!」

  「「……。」」

  試合が始まると、二人は互いの様子見を始めた。

  玖珂家の剣術について説明すると、基本の型は、横に薙ぎ払う『一閃』、一直線に斬り抜ける『疾風』、自分の周囲を斬り払う『周閃』、十字に切り裂く『十文字』の四つしかない。それは何故か。玖珂家の掟として、「己の力で道を斬り開くべし」とあるからだ。初代当主は、受け継がれる技は家の技、己の技ではない、と考え、技は基本的なものしか伝えず、あとは各々に技を考えさせるようにしたようだ。当然、一つしか考えずそれを極める者、多数考え対応性・手数等を求めた者、と様々だった。また、武器も太刀のみならず、小太刀、大太刀、二本の太刀を使う二刀流がある。つまり、ほぼ我流に近いのだ。それゆえ、体の使い方、技のキレ、威力、速度など様々なことが個人に要求される。しかも、己のみでだ。ゆえに、扱いづらいし、厳しいのだ。なのに玖珂家の剣術であり続けるのは、基本の型が、当時から絶対唯一の威力・速度・正確性・キレを兼ね備えており、独自の技も基本の派生であり、技ごとに構えが存在しないからだ。構えは『納刀』と『抜刀』のみ。そこから、どのような体勢でも放てる型のみで構成されているからだ。技名は、「玖珂家 〇〇流」とつけ、空欄にはその人の名前が入る。ちなみに、はる姉は太刀一刀流、あいちゃんは小太刀だ。

  さて、試合に戻ろう。未だ、微動だにせず立っている。すると、はる姉が動いた。

  「『疾風』!」

  「っ!」

  親父が右に避ける。

  「『一閃』!」

  今度は後ろに。

  「流石ですね。」

  「いやいや、千春君もだよ。素晴らしい速度とキレだ。」

  「ならばこれはどうでしょう?」

  「「「っ!」」」

  空気が変わった。仕掛けるか!

  「玖珂家 千春流 『桜舞』」

  その瞬間、はる姉の手がブレた。

  「ぬおっ!?」

  親父に向かって無数の斬撃が襲いかかる。流石の親父もいなすのが精一杯らしく、10撃目にしてようやく後ろに大きく飛んだ。

  「いやー、びっくりしたよ。手が痺れている。」

  「恐縮です。」

  「ちなみにそれはいくつまで行けるのかな?」

  「今は最高で24ですね。腕にかなり負担がかかるので。」

  「なるほど。千春合格!」

  「えっ、もうですか?」

  「だって、実力の確認だけだからね。そこまで疲れさせるつもりはないよ。」

  「そうですか。ありがとうございます!」

  「うん、これからも励むように。」

  そう言って二人は握手をし、試合を終わる。これ、審判いらなくないかな?

  「じゃあ、次は愛璃君だね。」

  「はい。」

  親父はそう言って休憩もせず次の試合に進んだ。

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