第2話

  俺が庭に立ち始めて10分。親父との集合時刻は9時だったが、現在時刻は9時5分。完全に親父の遅刻である。

「まだかなぁ、親父。」

  5分過ぎただけでまだかと言うのも仕方ない。玖珂家は時間にとにかくうるさいのだ。そう言って、少しすると、

  「いやあ、遅れた。すまん。」

  と、親父が現れた。

  「親父、遅刻だよ。」

  「準備と連絡に手間取ってな…。いや、言い訳はいかんな。すまん。というか、お前、口調と父親に対する呼び方の違和感がすごいぞ、相変わらず。」

  「“パパ”は子供っぽいし、“お父さん”は他人行儀な感じがするから、しっくりするのを選んだらこうなったんだよ。」

  「まあ、構わんがな。それより、用事の方だが…。」

  自分で聞いといて、それよりって…。

  「千春と愛璃はまだなのか。」

  「えっ、二人も呼んでるの?」

  「まあな、お前には伝えてなかったか。」

  「先に言ってよ…。ん?この音は…。」

  ザッザッザッザッ…ズササーーー!!

  「お待たせして申し訳ありません!刀理様!」

  「お待たせしてすいません。当主様。」

  謝罪を言いながら庭に駆け込んできたのは、義理の姉の玖珂 千春くが ちはると幼馴染の篠原 愛璃しのはら あいりだった。ちなみに親父を刀理と呼ぶのが千春、当主と呼ぶのが愛璃だ。姉は俺の母が死んだ後、親父が再婚した義理の母・桜花と共にやってきた。なんで、義理にも家族なのに親父を名前で呼ぶのかわからないけど。

  「おはよう、二人とも。やけに遅かったね。」

  「親父だけはその台詞を言わないで。それと、おはよう。はる姉、あいちゃん。」

  はる姉、あいちゃんは俺が二人を呼ぶ時の呼び名だ。

  「おはようございます、刀理様。おはよう、刀真!」

  「おはようございます、当主様。おはよ〜、とーまちゃ〜ん!」

  「ゲホォ!?」

  あいちゃんが俺の腹に突っ込んできて、吹き飛ばされてしまった。

  「とーまちゃん、とーまちゃん、とーまちゃん!会いたかったよ〜!」

  「ちょっ、あっ、あいちゃん!く、くるしい…!」

  「あっ、ごめんね、とーまちゃん。今、どくね。」

  そうして、二人して立ち上がる。あいちゃんは、親父にはお淑やかというか静かなのに、なぜか俺のことになると人が変わったように明るい性格になるのだ。←超唐変木野郎

  「あいちゃん、一週間しか経ってないよ。」

  「一週間とーまちゃんに会えないのは寂しかったんだよ〜!」

  「わかった、わかったから、落ち着いて!?」

  「ごほん、二人とも、要件に移りたいんだが?」

  「「あ、はい。」」

  「よし、それじゃあ、三人に要件を話すとするか。」

  そういえば、要件って何だろう?

  「親父、要件って何?」

  「今から説明するから、そう急かすな。」


 ーー そうして、俺たちは信じられないことを聞くことになる。

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