第3話 代返

 「今、出席カードの回収が終わった! しかし! 近頃カードのみ提出し講義に出ていない者が多数いることが確認できている! よって、今からカードと本人の照らし合わせを点呼で行う!」


 筋骨隆々きんこつりゅうりゅう、強面のドミニカ講師が教室の最後列まで響く声で言う。


 「嘘だろ……」


 教授の言葉を聞いたリツは顔面蒼白となる。

 

 そりて数十分前のやり取りが脳裏に浮かぶ。

 

 『リツよ、俺の分の出席カード出しといてケロ!』


 『カエル族だけに帰るってか! オーケーだよ。遊びにでもいくの?』


 『彼女とデート』


 『ふざけんな! 今のなし! 代わりに出すのなし!』


 『た、頼むケロ! ラーメン奢るケロ!』


 『む、んー』


 カエル顔でヒョウタンのような体型をしたカエル族のゲレーロ。友人に代返だいへんを頼みデートに行く者の当然の報いだとリツは思う。


 そんな友人がこの後どうなるかはリツの頭にない。


 「僕のラーメンがー」


 人の金で食べるラーメンは美味い。

 

 リツは、それを失ったことが何よりもショックであった。

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