影に咲くルピナスと空っぽの俺と

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「なんで、家系ラーメンなんですか!豚骨の匂いはもう当分嫌なんですよ!私が死ななかった事の当てつけですか?」

立川北から国立の大学通りへ、バイクを運転する俺の耳元に、エンジン音にも負けないキンキンとする大声で喚く藤乃という少女。

全くうるさいこと限りない。

3月31日の夜、俺はこの女を殺そうとした。

それは、俺の本意ではなくて、そこに自分の気持ちもなかった。故に罪悪感など微塵もなく"仕事"を終わせられるはずだった。が、思いの外、強かったのだ。

初めて、俺はターゲットの息の根を止めれなかった。

強さの根源とは、多分……心技体の、心なのだ。

口がすっぱくなるほど、師匠のお爺に言われた一言がリフレインする。


『どれだけ、手先の器用さや、力があろうが、それは強くて脆い。花崗岩みてぇなもんや。粘りがないんよ。そこに強度を足すものは、心だ。冬馬……お前にも、この汚い流派の剣を握る意義を見つける時が、きっと、きっと来る。雪に耐えてこそ、梅の花は麗しく咲くもんや』


俺の後ろに乗るこの子はきっと、強い信念を持って、俺を、そして、元雇用主を撃とうとしたのだ

だからこそ、俺の胸に手をかけるこのウドより細い腕で、棒切れの様なこの足で、本当の殺すという気概を持って、俺を撃とうとしたのだろう。

それに足りなかったのはきっと、力と技だったのだろう。

だからこそ、俺はこの子の事を気に入ったのだ。

この強い閃光の根元を知りたくて。

汚い人殺しをしていた俺は鳴りを潜めて、隣でぶつくさと文句を垂れる藤乃という少女をなだめるのだった。

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