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「じゃあ、また会いましょうね!ご飯美味しかったです。」

「由乃ちゃんまたね!次もいい所連れて行ってあげるから!」

「本当ですか?嬉しいです!」

私はその男の手を取って、絡める。

卵を扱うように優しく、そして少し物足りないくらいで身を引く。

(やっぱり、可愛いなぁ由乃よしのちゃん)

この西条さいじょうという男もそう。男はみんな馬鹿だ。所詮は性欲で物事を測る自分勝手な生き物。騙されているのにも気づかない。そして、利用されているのにも気づかないでいい思い出だったと過去の女と別個に思い出を記録する。それが片思いであろうと、どんなに汚い恋であろうと綺麗な思い出として記憶しているらしい。

そこに偽りの愛だったとしても、男はそれに気づかない。

「じゃあ、これ。今日の分。学費、大変でしょ?だから、ちょっとおまけしといたよ」

「……いつも、ありがとうございますっ」

私は自分の中身を切り替えて、精巧な人形の微笑みを浮かべて触りたくもない男の腕に腕を絡めて愛をささやく。偽りの愛と引き換えに、幾ばくかの日銭を手にするのだ。


西条という金ヅルもとい、初期からの常連さんから金をせしめた後、私は一人、神楽坂駅へ歩みを進める。

「男って、本当馬鹿……」

春の冷たい風と、他人など気にする暇もない、残業終わりのサラリーマンたちの間を縫って道を急ぐ。

私は、先の男の欲に当てられて濁ったような左目を押さえて、街を歩く。

男が馬鹿であるように、人の心を盗み見て、求められる事を先読みして心と身体を削る自分もまた、愚かなのだと気づいてもなお、私は自身と周りを偽り続けるのだ。


だって私は復讐に生きる、人ならざるものだから。

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