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「どう?ここのラム肉美味しいんだよ」
「そうですね、羊って癖があると思ってたんですけど、すっごく美味しいです!」
「気に入ってくれたみたいで良かったよ、連れてきた甲斐があったってもんだね」
「私こそ、こんな美味しいもの知れて嬉しいです」
私は
会った時の互いを牽制するような、間合いを図るような品定めの時間が過ぎて、二人の間合いが
「ところで、どんな職業なんですか?あんまり聞いちゃいけないのかも知れないですけど……」
「どうして興味あるの?」
(この女、何が目的だ?俺の仕事なんかに興味があるのか?金だけ貰ってればいいだけだろうに)
わたしのありふれた質問に高城は少しの警戒感を滲ませるのが分かる。
現に高城の心に
「いや、だって、こんな美味しいお店ですけど、ラム肉なんてなかなか食べないですし、接待とかで知ったのかなって」
(なんだ、そんなことか……所詮は年相応の可愛いだけの子か……)
「そうだね、人よりは多いかな。まぁ、お得意様が国家だったりすることもあるし。」
「え、国相手!すごいですね。どんな関係なんですか?」
「そこまでは言えないんだ!ごめんね」
「えぇ、そんな事言われたら、もっと気になっちゃいますよ」
この人も所詮、ほかの男と変わらない。プライドと性欲の前に秘密なんかない、自己顕示欲の塊だ。地位を自分の力で掴み取ったと思い込んでいる人ほど陥りやすい。そして、私の1番やりやすいカモである。
何も知らないフリをして、私は心の中でせせら笑う。
私の事を下に見てるようだけど、私は貴方の全てが見える。
わたしの質問とアピールも適当にはぐらかされて、始められた高城の自慢話を聞き流して、思案する。
専門は国家プロジェクトの入札。自分の次の一手に重要な人物の事なんて、とっくに知っている。
系列会社の財務部の人、名前は覚えていないけど、その人から辿ってここまで来たのだ。
なにやら会社のお金で不正をしたようで、どうなったかは知らないけれど。情報も金も、私の時間と労力と引き換えに搾り取ったのだ。
もう、用済みだ。
さて、この男、次はどうしようか。
私は自分の目的を果たすための一手を考えながら、目の前の少し冷めたラム肉を頬張るのだ。
「高城さんのことたくさん聞きたかったのに……お料理冷めちゃいますよね」
「ごめんね!そうだ、ワイン飲める?お詫びにどう?いいのがあるんだ」
「え、じゃあ飲みたいです!私いいお店のワインとか少し気になってたんですよ。けど、自分だと飲めないし」
ちょっとあざとく笑ってみる。
いずれ私が嘲笑うようになることの男の末路を思いながら、味の分からぬ
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