第15話 まるでアナタは思い出に生きる少年のように
「この先には行かせませないわ!」
最上階を目指す俺の前にユラギが現れた。
ユラギの隣にはフィラ――ハクマも共にいる。
「やっぱり俺を足止めしに来たか」
「最上階に続く通路はここしかないからね。それにしても驚いたよ。まさかマミヤをこんなにも早く倒してしまうなんて」
「先を急いでいるからな。悪いがお前らにはここで寝ててもらうぞ」
俺は情炎を両手に宿して二人に構える。
ユラギとハクマもそれぞれの炎を出して俺を睨みつける。
「……戦う前にお前らには少し尋ねておきたいことがある」
俺がそう言うと二人は怪訝な表情をした。
「ユラギ、ハクマ、お前らは二年間の記憶を全部思い出しているんだよな?」
「何を今更、友達だったからって見逃してはあげないわよ」
「別にそんなつもりはない。俺はお前らをちゃんと倒していくさ。でも、それを聞けたから俺はお前らと心置きなく戦える。操られている訳じゃないからな」
「……マミヤに何を吹き込まれたの?」
ハクマが俺に違和感を感じたようで警戒を強める。
「お前らはこの二年間、楽しかったか? 俺は楽しかったよ。――少なくとも前世の頃以上にな!」
俺が告白魔法の炎を全身に纏わせ、ハクマとユラギを一瞬で纏めて倒す。
「俺はこんなふざけた世界を壊してルミナと一緒に元の世界へ帰るんだ」
最上階に続く階段に足を掛けた。
@ @ @
「告白魔法使いを全員退けたか。想定通りだが、お前の成長速度はやはり凄まじい」
「ダーイン! ルミナを返してもらおうか!」
最上階に辿り着き、待ち受けるダーインに俺は吠える。
「悪いがこの子は返せない。黙示の魔獣を復活させるために必要なんだ」
「復活……マミヤの言っていた通り、お前の目的は黙示の魔獣を封印することじゃなかったんだな」
「順番は違うが、魔獣はきちんと封印するさ。魔獣に散々暴れまわってもらった後に、ではあるが」
「黙示の魔獣を兵器としてしか考えていないのか……」
「黙示の魔獣を解き放つことで世界をリセットするのさ。だが、貴様らにはもう関係のない話だろう? 黙示の魔獣が滅ぼすのはこの世界ではなく、貴様らにとっての『前世』の世界なんだからな!」
ダーインの本当の目的、
それは俺たちの元いた世界を滅ぼすことだった。
「ダーイン、お前の正体は何なんだ……」
「知りたいか? 私の正体が」
ダーインの周囲の空気が歪み始める。
蜃気楼のように見えるそれはハクマの炎による『具現化』ではなく、光の屈折に近いものだった。
「また会いましたね、ツヅリ・ランダース」
光で歪められていたダーインの正体はエロスに仕えていたはずのプシュケーだった。
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