第14話 まるでアナタはカツ丼大盛り卵増量

「カツ丼食うか?」


 ザレンのおっさんが俺にカツ丼を差し出してドヤ顔をする。


「……どうしてこうなった」


 俺はさっきまで風雲ダーイン城(仮)の牢屋に囚われていたはずだ。

 それがどうしていつの間にか取り調べを受ける事態になっているのだろう。


「これでこの取調室に来るのは何度目だ。ラビィさんも悲しんでいるぞ」

「いや、まだ二回目だろ」

「何を言っている。君は二年間で割と結構補導されているぞ」

「なるほど、つまりこれは俺が見ている夢みたいなものか」


 聖堂だの嫉妬の炎だの良くわからない場所に飛ばされ続けた俺には簡単に解けた謎だった。


「ふむ。ちゃんと見抜いたか。そうだ。これは夢だ。君の過去の記憶を参照している」


 ザレンがそう言うと、彼の体はドロドロに溶けていき、別の人物の姿となる。


「こんばんは。ワタシよ♡」


 泥のようなそれはマミヤの姿になって気色の悪い投げキッスをした。


「何しに来た?」

「ちゃんと捕まっているかの経過観察よ」

「見ての通り、取調室に捕まっているが」

「これはワタシの警戒の炎によるマインドコントロールの過程よ。こうやって対象の過去の記憶を遡って脳から侵食していくの」

「だったら俺はその炎を打ち破る!」


 俺は右手に炎を灯す。

 しかし、炎は俺の意思に反してどんどん小さくなっていった。


「無駄よ。もう君はワタシの支配下にあるの」

「そうか。……そうか?」


 けれども、俺は再び右手から炎を吹き出させる。


『この身を焼いてでもここから出てやる!』


 炎は俺の全身に燃え移り、熱で取調室の壁や天井を溶かしていく。


「嘘っ!? 自分の記憶ごと焼き切って脱出するつもり!?」

「『反骨の炎』――もう誰も俺を止めることは出来ない!」


 俺が拳を振りかぶった時には警戒の炎で作られた空間はすでになくなっていた。

 情炎を纏った拳がマミヤの顔を殴り飛ばす。


「がはあっ!」

「全身が火傷をしたみたいに熱い……」


 身体に火傷をした跡はないが、あと少し遅ければ身体の内側から発火していたかもしれない。

 ラビィは牢屋の隅で気絶していた。


「さあ、マミヤ、ルミナの居所を教えてもらおうか」

「くふっ……ルミナちゃんはこの実験棟の最上階にいるわよ。ダーインに捕まっているわ」


 マミヤは敗北したにも関わらずどこか満足そうな表情をしていた。


「でも、黙示の魔獣が復活するまで時間がないわ。きっとダーインも全力で抵抗するでしょう。ハクマちゃんやユラギちゃんも立ち塞がってくるでしょう。そこで、君には伝えておこうと思うことがあるわ」


 

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