第13話 まるでアナタは留まることを知らない雲のように
私の名はハクマ・カートレット。
表向きにはフィラと名乗っているが、本当はこちらの名前が本名だ。
前世の名前は
神矢綴や愛璃瑠未那と同じ世界から来た元日本人の女子高生。
昔から私は人の顔色を伺って『心の仮面』を付け替えるのが得意だった。
家では大人しく、学校では活発、普通はそのどちらかが本当の自分だったりするけれど、私はどちらでもなかった。
どちらも偽りの自分でしかなく、得意とする告白魔法が無から有を生み出す性質になっているのはそのせいだろう。
「ダーイン様、ただいま戻りました」
我々告白魔法使いが集められ、学園の姿で秘匿されていたダーインの居城『実験棟』の最上階に私は到着して、一人の男の前に跪く。
「ハクマか。ツヅリとかいう小僧はどうだった?」
「この建物の牢屋の一つに閉じ込めておきました」
「そうか。しかし、牢屋に入れた程度ではすぐに抜け出すだろうな」
「申し訳ありません。私一人ではツヅリを相手にするのは少々厳しいと感じまして」
「叱責した訳ではない。例え牢屋から抜け出そうとこの実験棟からは逃げられないのだからな。それに奴らはどの道ここを目指してくるだろう。私にとってはそちらの方が好都合だ」
「では、ここで彼らを迎え撃つと?」
「つい先程、マミヤから連絡があった。ルミナを回収したらしい。ユラギは戦闘不能になったそうだが、明日までには目覚めるだろうと言っていた」
「では、これで残った告白魔法使いは……」
「そちらはもう終わっている」
ダーインの足元には気絶したシンクが倒れていた。
「つまり、告白魔法使い六人全員が揃ったのですね」
「黙示の魔獣に対抗する準備は整った。あとはルミナを殺し、肉体から魔獣を解き放つだけだ」
「ダーイン様……お言葉ですが、本気でルミナを殺すつもりですか? 自分の娘だというのに」
「ずっと前から覚悟していたことだ。私は魔法使いの英雄。悪しき魔獣が娘の肉体に宿っているのならば、娘を倒すことさえ厭わない。私はそういう人間だ」
ダーインは感情の失われた目で私を一瞥する。
彼は本気だ。
「……どうして、二年間の記憶を彼らから失わせたのですか?」
「死が宿命づけられたルミナに幸せな時間を与え、最期に辛くならないように今までの記憶をリセットさせる親としての優しさだ。結局はマミヤの詰めが甘かったせいで思い出させてしまうことになってしまったが」
「やはり、記憶に関してはマミヤの警戒の炎によるマインドコントロールによるものでしたか。あの男の告白魔法は好きになれませんね」
ダーインは私に背を向ける。
「……もうすぐだ。貴様たち告白魔法使いを人柱として世界は救われる。神によって選ばれた『異世界からの使徒』である告白魔法使いの命を以て、私は黙示の魔獣を封印する」
彼の視線の先には巨大な魔法陣が描かれていた。
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