第11話 まるでアナタは息を潜める獣のように−5
「二年間を一瞬で? 言っている意味がわからない」
「でも、これはすでに起こってしまった事実だよ。君たちの青春はとある人物の告白魔法によって忘れ去られてしまっていた。もう過去には戻れない」
「もしかして、世界が滅びるまであと一日しかない理由は……」
「タイムリミットのギリギリで思い出すように仕組まれたんだよ。アタシの雇い主も黙示の魔獣の復活を阻止したいのは同じだからね」
「アンタの雇い主って誰なのよ!」
「そんなの、決まってるじゃん。――ダーイン・メルトリシア。ルミナのお父様にしてこの学園の最高責任者。実を言うとね、アタシはユラギと仲間同士なんだよ」
俺はフィラがユラギの仲間だと知り、彼女に向かって構える。
「おっと、争うつもりはないよ。ユラギは君を消そうとしただろうけど、アタシはそんなことをしない。敵の仲間だからって敵とは限らないよね?」
「何が目的だ?」
「うん。君にとっては難しいことかもしれないけどよく聞いて欲しい。アタシたちの目的は黙示の魔獣に取り憑かれた告白魔法使いルミナ・メルトリシアの討伐なんだ。君にも手を貸してもらいたい」
フィラが言った台詞に俺は耳を疑う。
彼女は確かに黙示の魔獣に取り憑かれている者がルミナだと喋った。
「信じられないという顔をしているね。それも仕方がない。ルミナが本当の敵でましてや殺せだなんて君に出来るはずがないだろう。アタシは初めからそう思っていたよ」
フィラの周囲が緑の炎に包まれ始める。
緑の炎はみるみるうちに広がっていき、俺たちの足元まで到達するが、熱さなどは感じなかった。
「今からアタシの傲慢の炎を解くよ」
「具現化の魔法……この学園全部がアンタの炎で出来たものだと言うの!?」
「もちろん。そして、ようこそ。ここはもうアンコール魔法学園なんかじゃない。その名も魔法監獄メルトリシア。君たちが過ごしてきた学び舎の真の姿だ」
炎のテクスチャが剥がれ、現れたのは石で覆われた薄暗い牢屋だった。
「君たちはここでルミナが倒されるまで待っているといい。アタシたちが決着をつけてくるから」
フィラは牢屋の鉄格子をすり抜けて廊下に出てしまう。
魂だけの存在であるから故に出来ることだ。
俺たちは鍵のかかった牢屋に閉じこめられてしまった。
「畜生! 待ちやがれ!」
「待てないよ。何せあと一日しか時間がないんだ。君にはなんとしてでもそこで大人しくしていてもらう」
そう言って、フィラは立ち去り、俺とラビィは牢屋に取り残されてしまった。
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