第7話 まるでアナタは息を潜める獣のように-1
「やあ、よく来たね、ツヅリ君。今回はどうしたのかな?」
目覚めると恍惚の大聖堂に俺はいた。
「ここは……」
「どうやら君はラビィに射抜かれて気を失ったみたいだね」
大聖堂の玉座にはエロスとプシュケーが並んでいる。
俺にとってはもう見慣れた光景だ。
「そうか。俺はラビィの矢で心臓を撃たれて……って、そうだ! エロスに訊きたいことがあるんだ!」
「黙示の獣についてのことかい?」
俺の考えを見透かしたようにエロスは言うが、その表情は普段と変わらず悪意など微塵にも感じなかった。
「お前、知っていたのか!?」
「そうだよ。まさか、タイムリミットがあと一日まで迫っているとは私も知らなかったが」
「なんで黙っていた!」
「僕はそのことについて君から尋ねられなければ答えられなかったんだよ」
「……どういうことだ?」
「今こそ、全てを教えてあげよう。告白魔法とは一体何者か、黙示の獣とはどんな関係か、ということについてね」
エロスの表情は突然、真剣なものに変わった。
「告白魔法使いとは、本来、言葉に調和をもたらす存在なのさ。そもそも、告白魔法は日本語で『おはよう』という言葉が朝の挨拶だと認識させるのと仕組みは同じで、聞く側の者がいて、初めて効果を発揮するものなんだ」
「それは、知らなかったな……」
「だけど、告白魔法の力が強まるほどにカウンターとなる存在が現れる。それが、黙示の獣。そいつの目的は人々から言葉を奪うこと」
「言葉を奪う? 奪われるとどうなるんだ?」
「この世界の人間は誰も言葉が話せなくなる。言葉がなくなれば、世界は混乱に陥るだろう。人間は獣と変わらない生活を送るしかなくなる」
「まあ、恐ろしいことではあるが、それは世界の滅亡とまで言う話か?」
「いいかい? 言葉がなくなるということは言語や文字さえもなくなるということなんだ。それらが世界からなくなってしまえば人間は会話が出来なくなるのだよ。コミュニケーションの不和は戦争などの引き金になることも多い。とても危険なことなんだ」
「なるほど……そうなると、ユラギの言っていた告白魔法の全滅が黙示の獣の復活を阻止することになるって話は?」
「間違いではあるし、間違いではないかな」
「歯切れが悪いな」
「すまない。これについては私もはっきりしたことが言えなくてね。ぶっちゃけて言うと、告白魔法使いは全員で六人いるが……」
エロスは言い出しにくそうにしていたが、俺を一瞥して口を開く。
「その中に一人だけ裏切り者がいるんだよ」
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