第6話 まるでアナタは雪解けを待つ桜のように-6
「しゃがみなさい! ツヅリ!」
その時、俺は背後からの声を聞いて、咄嗟に身を屈める。
次の瞬間、一本の矢がユラギの顔面を狙って飛んできた。
ユラギはその矢を空中で掴み取り、そこで一瞬の隙が生まれる。
「ツヅリ! 今のうちにこっちへ逃げなさい!」
振り返るとラビィが廊下から俺に手を振っていた。
俺は起き上がって迷わずラビィが逃げる方へ走ってついていく。
「ラビィ! お前今までどこにいたんだ!」
「あのユラギって女を監視していたのよ!」
俺は逃げながら後方を確認するが、ユラギが追ってくる様子はなかった。
「お前、あのユラギとかいう奴と何があったのか!?」
「あんたたちが編入試験を受けた日、あのユラギって奴はあんたたちを観察していたのよ。そこで、怪しいと思った私が声をかけたら、ユラギは意味深なことを言って私の前から逃げ出したの」
「意味深なこと?」
「告白魔法使いがいると世界が滅亡するとかなんとか」
「それなら、俺もさっき聞いた。本当なのか?」
「私だって知らないわ! エロス様なら知っているかもしれないけど……」
ユラギの話はにわかに信じられないが、本当だとすれば、世界が滅亡するまであと一日しかないということだ。
そう考えていると、俺たちはちょうど廊下の角でルミナとばったり出会った。
「先輩! ご無事ですか!?」
「ルミナ! お前の方も無事だったか!」
「突然、学校から異様に人がいなくなって、何らかの魔法が行使されていると感じたので調べていたのですが、先輩は心当たりないですか?」
「今、その魔法を使った奴から逃げてきたところだ」
俺たち三人はそれから空き教室の一つに潜むことにした。
「世界の滅亡……ユラギさんという方は確かにそんなことをおっしゃっていたのですか?」
「ああ。明日、世界が滅びるなんて言われても俺にはピンと来ないんだけどな」
俺がルミナに事情を説明していると、ラビィがなにやら弓に矢をつがえた。
「……ラビィ?」
「エロス様に直接尋ねるしかないみたいね」
そう言ってラビィはつがえた矢を俺に向けてきた。
「ラビィちゃん!?」
「許しなさいツヅリ。これから私は特別な矢であなたを射抜くわ。怪我はしないけど、気を失うと思う。それくらいは我慢して」
「なっ、何をする気なんだ!?」
「あなたをエロス様のところまで送るのよ。ルミナ、あなたも怒らないで。これは緊急を要する事態だから」
ラビィは静かに矢を俺の胸に目掛けて撃ち放った。
俺の心臓にラビィの矢が突き刺さり、俺は意識を失うのだった。
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