第5話 まるでアナタは雪解けを待つ桜のように-5
「ねえ、ツヅリ君……だっけ? 少し話があるんだけど、イイかしら?」
初日の授業が無事に終わり、俺が帰る準備をしていると、ユラギが話しかけてくる。
「一体どうした?」
「おや? そんなに警戒することはないじゃないの。私はあなたと同じ告白魔法使いなんだから」
「同じ告白魔法使いだから警戒しているんだよ。今まで経験から告白魔法使いと関わったら禄なことが起きないと知っているからな」
「そうね。あなたはこれまでに私を含めて五人の告白魔法使いと接触しているわ。そんなあなたに私は興味を持っているのよ」
「戦いなら勘弁して欲しいけどな」
「戦うなんてとんでもない。ただのお話よ。二人でお話をしましょう」
いつの間にか、周囲には俺たち二人を除いて人が誰一人いなくなっていた。
「一体何をした!」
「お話がしたいから他の人たちには帰ってもらっただけよ。大丈夫。危害を加えたりなんてしていないわ」
ユラギの手に情炎が宿っている。
恐らくなんらかの告白魔法で人避けをしたのだろうが、俺は告白魔法が発動していたことにすら気づかなかった。
「さて、何から話そうかしら。……そうだ! ツヅリ君、あなたは世界の滅亡って信じる?」
唐突にユラギは意味のわからないことを言い出す。
「世界の滅亡? 随分とオカルト染みた話だな。……別に有り得ない話ではないと思うぞ」
尤も、前世の世界ならともかく、こっちの世界に第三次世界大戦やアルマゲドンのような終末論があるかなんて知らないが。
「ふむふむ。だとしたら、私がこんなことを言ったらあなたは信じるかな? 『明日、世界は滅亡する』と」
「……………………は?」
「あははっ! 素っ頓狂な顔をしているね。確かにあなたの反応は正しいわ」
「お前、何が言いたいんだ」
「何が言いたいって、私はさっき言ったじゃない。この世界は放っておけば明日には滅亡するの。『黙示の獣』によって、ね」
「待て待て! 本気で言っているのか!? 大体、その黙示の獣って何だ!? 聞いたこともないぞ!」
「黙示の獣は告白魔法使いの反存在。告白魔法使いが揃った時に復活する災厄の破壊神よ」
夕焼けが空の外からそよ風が吹き込んできた。
風の感触は前世もこの世界でも変わらない。
とても、明日に滅亡する様子など微塵にも感じられなかった。
「この世界を救う術はたった一つ。告白魔法使いを一人残らずこの世から消し去ることだけ」
そう言ったユラギが俺に情炎で包まれた右手を向ける。
「おい、お前まさか、俺と争うつもりじゃないだろうな?」
「いいえ、争いなどしません。私はただ、あなたをこの世から消すだけですから」
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