第4話 まるでアナタは雪解けを待つ桜のように-4

 俺の告白魔法を受けてゴーレムの腕は粉々になって吹き飛んだ。


「なんだ、あいつの魔法……詠唱がなかったぞ。……いや、あの適当なシャウトが魔法詠唱だったと言うのか?」

「聞いたことがある。あれはきっと、告白魔法というものだ。どんな言葉でも嘘偽りのない本心であれば魔法になるらしい」

「確か、世界でもまだ数人しか使い手が見つかってない超希少な魔法だったはずよ」


 クラスメイトたちがヒソヒソと俺について話し始める。

 だが、俺はクリスタルゴーレムに集中しており、それどころではなかった。


「まだ終わっていないわよ。アタシのゴーレムちゃんの再生力、舐めないで欲しいわあ」


 粉々にしたはずのゴーレムの腕が付け根からみるみるうちに再生していく。


「嘘だろ!? 俺の告白魔法は腕を丸ごと吹き飛ばしたんだぞ!?」

「アタシのゴーレムは空気中の塵からでも材料を集めて新しい身体を作ることが出来るのよ」


 ゴーレムは体育館の床に拳を叩きつける。

 すると、床のあちこちから結晶の柱が突き出し始めた。


「まさか、結晶を床下に這わせていたってのか!?」

「このクリスタルゴーレムはあらゆる場所の鉱物からクリスタルを取り出して自由自在に操ることが出来るのよ」


 慌てて結晶の柱を各々の魔法で砕いていくクラスメイトたち。

 しかし、俺は迂闊にも結晶で足を囚われて身動きが取れなくなる。

 すかさず、クリスタルゴーレムは動けない俺に対して襲いかかってきた。


『鬱陶しいわよ。消え去りなさい』


 その時、ユラギがドスの効いた声でそう言って結晶の柱の一つに触れた。

 直後、結晶の柱から亀裂が走っていき、床下を通してクリスタルゴーレム本体まで届いていく。


「ユラギ!? お前、その手の宿っているのは――」

「私の情炎、『嫌悪』の炎が持つ性質は『死滅』。触れた瞬間に相手を死に至らしめ、決して再生なんてさせない能力」

「お前も告白魔法使いだったのか!」


 ユラギの手に宿されていたものは藍色の情炎。

 彼女の告白魔法を食らったクリスタルゴーレムは今度こそ再生もせずに動かなくなる。


「素晴らしいわ、ユラギちゃん。 クリスタルゴーレムを倒したのはキミが初めてよ!」


 マミヤは笑みを浮かべてユラギに拍手を贈る。

 その様子を見るにマミヤはユラギが告白魔法使いであることを知っているようだった。


 これで、俺、ルミナ、シンク、ハクマ、マミヤに加えてユラギという新しい告白魔法使いが見つかった。

 告白魔法使いは合計で六人。

 不吉な数字に俺は胸騒ぎを感じるのだった。

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