最終話 まるでアナタは始まりを告げる鐘のように
「愛の力は素晴らしい!」
アンコール魔法学院のとある校舎の屋根から一人の少女がツヅリたちを見下ろして、拍手をしながら声を上げた。
少女は腰まで伸ばした赤い髪が特徴的で黒いドレスを纏っていた。
「まさか、嫉妬の炎に囚われていた人々まで救い出すとは、ルミナお嬢様の潜在能力とやらは凄まじいものね」
少女は両手を合わせて天に祈りを捧げ始める。
「ああ! ルダス様! 私は今、とても幸せな気分です! ……だって、ようやく、『六人』の告白魔法使いが揃ったのですもの!」
少女の顔に狂気で満ちた笑みが浮かぶ。
「嫉妬、憤怒、傲慢……これらは罪などではなく、愛! アガペの使徒は平等に愛するが故に嫉妬に囚われ、マニアの使徒は一途に一つを愛するが故に憤怒で他の全てを破滅させ、プラグマの使徒は利益を追い求めるが故に傲慢な支配者と化してしまう! しかして、その根底にあるのはやはり愛! この世の愛に罪などないのだわ!」
両手を大きく広げた少女は高らかに言い放つ。
「随分と騒がしい小娘がいるわね」
そこに弓を構えたラビィが降りてくる。
「あら? あなたは……ああ、エロスのキューピットね。初めまして。私はユラギ。告白魔法使いの一人『ルダスの使徒』よ」
「良からぬ気配を感じて来てみれば、今回の騒ぎはアンタの仕業?」
ラビィはユラギの頭に狙いを定めて弓を引き絞っていた。
「違うわよ。この嫉妬の炎は別の告白魔法使いが引き起こしたもの。でも、もう事態は収束したわ。あなたのお仲間、『エロスの使徒』と『マニアの使徒』の手によってね」
「エロスの使徒……ツヅリを知っているのね。それにマニアの使徒ってルミナを指しているのかしら?」
「キューピットとあろうものがあの子の正体がマニアの使徒だと気づいていなかったの?」
「知らなかったわよ。エロス様は何も教えてくれなかったのだから」
「警戒をしているのね、あなたのご主人様は。だけど、すぐに真実はあなたたちの前に現れて牙を剥くわ」
ユラギの左手から藍色の炎が湧き上がる。
「この世界の滅びは変えられないわ。――私たち告白魔法使いが全滅しない限り」
ユラギの身体は情炎に包まれ、跡形もなく消えてしまった。
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