第40話 まるでアナタは吹雪に揺らぐ焚火のように−2

 俺とルミナの炎は暗闇を砕き、青空を切り開く。


「先輩、空が!」

「やったなルミナ!」


 闇が崩れ去り、俺たち二人は顔を見合わせて達成感を分かち合う。


「…………あっ」


 俺はルミナの手をずっと握りしめていたままだったことに気づき、慌てて手を離す。


「先輩……」


 ルミナは少し残念そうな表情をする。


「いや、今のは違うんだ。決して、ルミナが嫌いとかじゃなくて……」


 さっきの告白を思い出して俺はルミナと顔を合わせることが恥ずかしくなる。

 ――だが、ここは男を見せなければ。


「ルミナ、あの告白だけど……」

「はい。……私は嬉しかったですけど、先輩はやっぱり――」

「俺は本気だからな」

「へっ?」


 ルミナは不意を突かれたように目を丸くして俺の台詞に驚いていた。


「なんだよ。不満か? 釣った魚には餌をやらないってか?」

「い、いえ……ですが、本当にいいんですか? 先輩には好きな人が――」

「好きな人が二人いるくらいは構わないだろ。別に付き合っている訳じゃないんだから」

「た、確かに……」


「納得しちゃ駄目よルミナちゃん。その男、今なかなかにクズな発言をしていたわよ」


 マミヤは俺たちの背後でひっそりと呟いた。


「それはそうと、この現象を引き起こしていた人物だが――」


 俺が周囲を見渡すと肝心の人物はすぐに発見された。


「どうして……どうして……ツヅリ君……こんなはずじゃ……」


 シンクはふらつく足取りで俺たちに向かって歩いてきていた。


「悪いな、シンク。俺は例えお前が相手でも負けられない」


 俺がそう言い放つと、シンクはギリギリと歯を噛み締めて、俺とルミナを睨む。


「ツヅリ君も私を愛してはくれないの? 私の味方じゃなかったの?」

「味方だよ。俺はシンクの味方だ。でも、味方であることと、愛することは違う。お前のわがままをなんでも聞ける訳じゃない」

「そっか。じゃあ、ツヅリ君は私の運命の人じゃなかったんだ」


 シンクの足元に紫色の炎が広がる。

 炎の下から妖しい影が蠢いている。


「『嫉妬』の炎! もう一度喰らわせてやるッ!」


 血走った眼で俺とルミナを視界に捉え、俺たちに蠢く影を差し向けた。


『まるでアナタは光の裏に立つ闇のように』


 しかし、嫉妬の炎はルミナの放った告白魔法にかき消される。


「先輩、ここは私に任せてください」


 ルミナの足元から青い炎が広がり始める。

 炎に照らされた影が大きくなり、意思を持つかの如く揺らめいた。


 ルミナの発動した告白魔法――それは、シンクと同じ嫉妬の炎だった。


 

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