第34話 まるでアナタは弱みに付け入る悪魔のように−3
「どうして俺を裏切りやがったあああっシンクううううっ!」
俺に襲いかかってきた人物の正体、
――それは、黒い泥に塗れたアランだった。
「アラン!? お前、なんでここに!?」
「はあ、はあ、うるせえええっ! さっさと俺を解放しやがれこのクソ女!」
アランは錯乱して短剣を振り回しながら叫ぶ。
「……? 俺のことをシンクだと勘違いしているのか?」
訳のわからない状況に俺も混乱するが、短剣を振りかぶるアランに対して一瞬の油断も許されなかった。
『来るなっ!』
俺の左手から冷気が湧き出し、アランの下半身を氷に閉じ込める。
「うごっ、うがああああっ!」
腰から下が動かせなくなったアランは絶叫して藻掻いていた。
「あら、やるじゃない。だけど、まだ他にもいるわよ」
マミヤにそう言われた直後、アランとは別の人影が俺たちの周囲に出現する。
その数はアランを除いて三人。
出現した人々は年齢も性別もバラバラだが、アランと同じく黒い泥に塗れていた。
「なんなんだこいつらは!?」
「彼らは恐らく今までにシンクちゃんの告白魔法の犠牲になった人たちよ。彼女の告白魔法は『嫉妬の炎』。あらゆる物質を己の影の中に吸収して自身の手駒に変える効果があるわ」
「まさか、シンクはずっと昔からこんな恐ろしい魔法を抱え込んでいたと言うのか!?」
「誰だって自分の醜い部分は隠したいものでしょう? キミだって、他人には言えないことが一つや二つはあるわよね?」
「…………」
シンクがどれ程の闇を抱えているのか、俺には想像もつかない。
だが、ここまで強力な告白魔法が発現しているということはシンクがそれだけ辛い気持ちを抑え込んでいたことに他ならない。
シンクの影に飲まれた人々の中にルミナの姿があった。
「あれは……ルミナ!」
「複製が作られ始めているとなれば、もうルミナちゃんの吸収は相当な段階まで進行しているわ。早く助けないと手遅れになるわよ」
本体を守護するように最奥で待ち構えるルミナの複製体。
更に俺の行く手を阻むが如く、アランの複製体が何十体もわらわらと現れ始める。
「ルミナを吸収されてたまるかよ! 今日こそは無双させてもらうぜ! 俺とこの告白魔法がな!」
左手には恐怖の炎、右手には憧憬の炎。
俺は二つの情炎を両手に宿してアランの大群に突っ込んだ。
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