第33話 まるでアナタは弱みに付け入る悪魔のように−2

「ここよ。ルミナちゃんはここにいるわ」


 先行していたマミヤが右手に灯した情炎の明かりを天に掲げる。


「ルミナ!?」


 俺は照らされたルミナの姿に驚愕する。


 ルミナは黒い泥のようなものに身体の殆どを包み込まれて気を失っていた。


「マミヤ! これはどういうことだ!? ルミナに何があった!?」

「ちょっとは落ち着きなさいツヅリきゅん」


 いい歳した男から名前にきゅん付けで呼ばれるのは勘弁して欲しい。


「ルミナちゃんは今、あのドロドロとした影に囚われて動けなくなっているわ。あのままだと影に取り込まれて消化されてしまうわね」

「助ける方法はないのか!?」


 俺はマミヤの肩を掴んで彼に詰め寄る。


「あるわよ、たった一つだけ。キミが告白魔法の使い手だからこそ出来る方法が」

「教えてくれ!」

「何、簡単な話よ。情炎の宿った手でルミナちゃんに触れて、彼女の意識を叩き起こしてあげればいいわ」

「それくらいならやってやるよ」

「ただし、そのためにはルミナちゃんと同じ感情をぶつけないと駄目よ」

「同じ……感情?」

「ええ。ルミナちゃんを救いたいなら彼女の気持ちに寄り添ってあげなければいけないわ。間違って共感出来ない感情をぶつけたりしたら、ルミナちゃんの意識は逆に引っ込んで出てこなくなってしまうかもしれないわね」

「ルミナに限ってそんなことがあるのか?」

「人の心の深層なんてどうなっているかわからないものよ。キミの知るルミナちゃんはヤンデレ気質の困った女の子という感じだろうけど、彼女にもキミにはまだ見せていない本音があるはずだわ」


 俺はゴクリと唾を飲む。

 俺の知らないルミナの心。

 それを知るのは少なからず恐怖があった。


「どう? ルミナちゃんの本音を知る覚悟は出来てる?」

「…………覚悟が出来てるとか出来てないとかは関係ないだろ。俺はやらなくちゃいけないんだ」


 俺はルミナの正面に進み出る。

 恐怖は抑え込み、ルミナを救いたい一心に全てを懸ける。


「その意気よ! 惚れた女の子のために身体を張るなんてかっこいいわ!」

「だ、誰がルミナに惚れてるって言った! 俺は決してルミナにそういう気持ちはないからな!」


 茶化してくるマミヤに俺は噛み付く。


「あらあら、素直じゃないわね〜。なんで否定するのかしら? 恥ずかしいから?」

「それは……」


 以前、ラビィにも似たような感じに茶化された経験がある。

 俺がルミナを異性として見ていない理由としては椎名さんという好きな人がすでにいるからだと理由づけは出来るが、それをはっきりと言うことは出来なかった。


「まあ、ワタシには他人の恋心なんて理解出来ないけどね。だって、ワタシ、自分しか愛せないから」

「ナルシストか。このやり取りだけで無駄に疲れた。早くルミナを救出するぞ」


 俺が影に囚われているルミナに近づこうとする。


「待って! 気をつけなさい!」


 しかし、次の瞬間、暗闇の中から謎の人影が現れ、俺に襲いかかってきた。


 

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