第273話 母さん、メリシア、また連れてきて貰おう!
「千歳?なんで帰ってきた?」
「お昼を食べるんだよ。
最初はメリシアさんを誘ってセカンドでと思ったけどメリシアさんを呼んだから家に帰ってきたの」
「だったらテツイ先生を誘っても良かったんじゃないのか?」
「ツネノリ、覚えてない?知らない?なら教えてあげる。
テツイさんはね、虹色カラスを安くて美味しいって喜んで食べるんだよ」
「何?」
「きっとツネノリの修行も主食は虹色カラスだっただろうね」
「そんな人が居るのか…」
「居るの。いい?多分あのまま居たらお昼に誘われたし、お城のご飯かも知れないけど、テツイさんは私とツネノリを見てお父さんとお母さんを思い出したって言っていたでしょ?
多分、城の外れにあるお父さんが一時期住んでいた小屋に招待されて懐かしいって虹色カラスが出てくるよ」
また千歳は恐怖の語り部となって俺に恐ろしい事を言ってくる。
「あ…ああ…」
俺は今回も何も言えなかった。
そう言えばメリシアは自宅に来たのは初めてで嬉しそうに家の中を見ていた。
父さんは黒髪になっていて、家の横に出来た塊に驚いていたので説明をしたら母さんと一緒に色々試そうと言っていた。
「神殺しの概念は王様に聞いてね」
「何で千歳じゃダメなんだ?」
「万一説明がうまく伝わらなかったときに王様に悪くいわれたくないからだよ。もう「意思の針」みたいな能力に目覚めようかな…」
「こらこら、そこまでする必要は無い。概念はキヨロスに貰うから安心しろ」
母さんがまとめるとようやく安心する千歳。
「ところで何でメリシアが居て一度帰ってきたんだ?昼飯くらいテツイにたかればいいじゃないか?」
「お父さん、虹色のお肉なんて私は食べたくないの」
「ああ、そういう事か」
「テツイなら出すかもしれんのぉ…」
「ほら、ツネノリ!帰ってきて正解でしょ?」
「ああ」
その後、急に帰ってきても大したものが作れないと言った母さんと父さんを連れてセカンドに行く。
千歳が「でもお肉の気分ではあるなぁ」と言って焼肉屋と言う所に連れていかれて焼肉を食べた。
「うぅ…太る…」
「神如き力ってカロリー使わないのか?」
父さんが不思議そうに千歳に質問をする。
俺と母さんとメリシアは網の上で焼けていく肉に真剣だ。
「どうだろう?でも神の世界に居た酒神とかは太っていたんだよね…怖いよ」
「じゃあ、食べるのやめるか?」
「やだよ!お姉さん!!カルビ追加で!!」
「はーい、喜んでー」
千歳が立ち上がってスタッフの人にお肉を追加している。
何がどうなのかとかよく分からないので父さんと千歳に全部任せているが色んな肉が出てきてとにかく美味い。
「メリシアさんもお腹いっぱい食べてね!」
「はい。ありがとうございます。焼肉って初めてですがとても美味しいですね。」
「ああ、俺も初めてだが美味しいな」
「何を言う、私もだぞ」
そう答えた所で父さんと千歳の顔色が変わる。
「千歳…」
「お父さん…」
「所で随分手慣れておるのぉ…ツネツギ?」と母さんが含みのある言い方で父さんに話しかける。
なるほど、そういう事か。
「確かに、千歳も注文が上手だよね」俺も母さんに乗っかって千歳に話しかける。
2人は「うっ…」「あ…」と困っている。
「ああ、勇者様と千歳様は焼肉を食べ慣れていらっしゃると」
そしてそこにメリシアがとどめを刺す。
「まったく、私達を差し置いてこんな美味しいものを食べているとはけしからん!」
「母さん、メリシア、また連れてきて貰おう!」
「はい。焼肉は好きになってしまいそうです」
「なあ、焼肉って高いんだぜ?多分この人数で本気出すとメリシアの宿の一番いい部屋に2人泊まるくらいで…」
「何を言う!こんなに美味しいのだ高くて当然だろう?」
「えぇ…、普段の金銭感覚はどうしたルル?」
「勇者様、こんなに美味しくてうちの二泊分で済むなんて焼肉って良心的ですね」
「お…おぅ…そうか?」
「千歳!ライスと肉の組み合わせが凄いぞ。それ以外にもお米料理はないのか?」
「え…ビビンパとか…クッパとか…」
「それも頼もう!」
俺達はお腹いっぱいになるまで焼肉を堪能した。
父さんは「普段から金は使わないが残高が一気に減ると心に響くんだよな…くそ…」とぼやいていた。
「それ以上ブツブツ言うのであればツネツギの奢りでマリオン達を一家全員招待させるぞ?」
「ひぇっ…、おま…、マリオンの家って14人居るんだぞ?いくらになると思っているんだよ?」
「知らん。それに比べれば家族5人で来るのは安かろう?」
「はい…その通りです」
父さんは諦めたように肩を落として支払いを済ませる。
そのやり取りに皆で笑いながら家に帰って少し食休みをした。
よし、午後はノースの城だ。
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