おまけの章〇ツネノリと千歳のゼロガーデン巡り(とか)。

第271話 俺、先生にお礼が言いたくて来ました。

「昨日話しておいた、私の息子と娘が城に行くと言う奴だがな、今日になった。今から行くから少しだけ時間をくれ」

母さんが通信球で話し出す。

朝来た千歳がいきなり「今日お礼参りに行こう!」と言い出したのだ。

昨日はエテに行ったりしたのに今日はお礼参りとは…元気だな。


「テツイの奴には言っておいた。

奴も大臣として忙しいからあまり長時間はダメだが話をするくらいは問題ない。

安心して話してこられるぞ」


「ありがとう母さん」

「ありがとうルルお母さん」


そう言えば千歳がまだ会社に着いていないと言っていた父さんはツネジロウだ。

父さんも通信球を用意して話し始める。

「…ああ、すまんな。子供たちは先にイーストに行くと言っている。

ノースには午後になる。

わかった」

父さんが通信を終えて俺達の方を向く。


「ザンネも確保したぞ。

ノースの門番に言えば話が通るようになっている」


「ありがとうお父さん」

「ありがとう父さん」


千歳はお土産を気にしていて、父さんが「気になるならセカンドの甘味でも持って行ってやれ」と言うのでセカンドまで買いに行っている。


すぐに「お待たせ」と言って千歳が帰ってくる。

「早いな」

「うん、時間制御もしたし。

神としてはそれくらいやれるようにならなきゃいけなくてさ、練習なんだよね」

やはりそう聞くと、つい心配になってしまう。

千歳は前向きに神としての覚悟を決め始めている。

そして率先して力を使うようにしている。


「それで?城まではどうやって行くのだ?」

「多分今のままでも瞬間移動出来るけど、どうしようかな?」


「最近、瞬間移動ばかりだから気分を変えたら良いじゃないか。

あんまり楽をすると太るぞ」

「ムカッ」

千歳は父さんを思い切り睨みつける。


「そうだな、千歳にばかり頼むのも気が引ける。

高速移動で行こう。

少し進めば城は見えてくる。

俺と千歳ならあっという間だ」

「じゃあ高速移動で行こう。

私もガーデンの景色を楽しみたいしね。

くれぐれも太りたくないからじゃないから!」

そう言うと千歳がもう一度父さんを睨みつける。


「別に俺は千歳が太っているなんて思ってないぞ」

「ツネジロウ、もう何も言うな。黙っておれ…」

母さんがやつれた顔でそう言う。



「じゃあ、行ってくるね」

「あんまり遅くならないようにするね」


「ああ、気をつけてな」

「テツイとザンネによろしく言っておいてくれ」


千歳に「行こう」と声をかけて高速移動を始める。

「ツネノリー」

「どうした?」


「先生に会えるのは楽しみ?」

「まあな、とりあえずお礼が言えるのは嬉しいな」


「そっか。良かったね」


そんな事を話している間にあっという間に城が見えてくる。

途中、何人かの人にすれ違って驚かれたがあまり気にしない。


昔、父さんから聞いたイーストの土地は草もあまり生えない土地だったが「大地の核」の出力が強まったおかげで今は大分元に戻っている。


ここ数年は花まで咲くようになった。


城に着いて門番の人にテツイ先生を呼んでもらうと大きな部屋に通された。


「やあ、こんにちは。ツネノリ君。千歳さん」

部屋にいた優しい顔の人が俺たちを見て微笑みながら挨拶をしてくれた。


「テツイ…先生ですか?」

「そうだよ。初めましてかな?久しぶりがいいのかな?」


「身体は覚えていますが、俺自身は…」

「では、初めまして」


「はい。初めまして」


それに合わせて千歳も挨拶をする。

「初めまして」

「初めまして。テツイです」


俺達は勧められるままに着席をして千歳は「お土産です」と甘味を渡す。


「ツネノリ君はルル様に良く似ている。

そして千歳さんはツネツギ様に目元が似ている。

2人と居るとあの奈落の日々が昨日のようです。

2人ともよく来てくれました」


「俺、先生にお礼が言いたくて来ました。

先生のおかげでセカンドの戦いも生き残れました。

ありがとうございます」

「私もツネノリの先生にお礼を言いたくて来たの。ありがとうございます」

そう言うとテツイ先生はとても嬉しそうにニコニコとしながら俺達を見る。


「はい。全部神様に見せて貰いましたよ」

「え?」

「東さん?」


「ええ、もしもツネノリ君が僕との日々を思い出したら勇姿を見せて欲しいとあの時にお願いしていました。神様はちゃんと見せてくれましたよ。

先程も窓から見えた高速移動の姿にとても嬉しくなりました」


そう言い遠くを見るとうんうんと頷く。


「その後の事はジョマ様が見せてくれましたよ」

「ジョマが?」


「ええ、僕以降の師匠の教えも駆使して勝利を掴む姿を全部見せて貰いました。

最後の戦いでは今一つ役に立てなかったのが申し訳ないですがそれでも教えた身としては嬉しいものです」

本当にテツイ先生は嬉しそうに俺を見て頷いてくれる。

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