第269話 私は神如き力の使い方を少し変えた。

私は神如き力の使い方を少し変えた。

ガーデンの外にいる時は人に戻れなくなる限界が近づいた時だけ髪の毛が赤くなるようにした。

ガーデンの中では今まで通りで、ジョマからは「神の演出として最高です」と言われた。


なので神如き力を学校でも反則にならないレベルで使っている。

説明のわかりにくい先生達の話でも問題なく理解できるようになったおかげで勉強に力を入れている子達には追いつかないが、中の中から上の下まで成績が上がってしまって先生達に何かあったのかと聞かれたので夏休みにジョマから勉強のコツを教わったことにした。

少し問題が出来て、案外理解できると勉強とは面白いもので進学先とサードの神としての立場の両立に悩んでいる。


学校生活と言えば、佐藤、田中、鈴木達とは前より少し話すようになった。

怪しい事を口走りそうになると神如き力で思考を曖昧にしているので問題は無い。

とりあえず学校でセカンドガーデンの特別枠は伊加利千歳とは言わせない。


そう言えばVR端末を貰った佐藤は年齢制限に引っかかったと嘆いていたのでお父さんに頼んでファーストガーデンのVR端末テストプレイヤーにさせてあげた。

ファーストのVRは13歳以上にしたのだ。

佐藤は「戦いはないけど素晴らしい景色が見られて幸せだよ!」と感謝してくれていた。



お父さんは9月から1ヶ月でファーストガーデンをVRに対応させる為に奔走していて土曜日もずっとガーデンを駆けずり回っていた。

お母さんやルルお母さん、そして私達の力添えで何とか乗り切ったお父さんの口癖は「東めぇぇ」だった。

神代行は中々大変だが、擬似神如き力と言うべきか、ゼロガーデンで神の使いが使っていた、神の力が宿った端末を貰ったので何とか管理できている。


お母さんはお父さんの代わりに外からレシピや家具をセカンドとファーストに入れる仕事をメインでやってくれている。

お父さんはお母さんにベタ惚れで気難しいお店に頭を下げる日は代わりに出向いたりしている。

正直私が読心とかを使ってしてしまえば…と思うのだがこれは悪用になるんだろうなと思ってやめておいた。



ツネノリはあの後すぐに私とゼロガーデンのお礼参りをした。ツネノリの先生達は皆すごくて、ツネノリの神を超えたいと言うお願いに即座に対応してくれて色々教えてくれた。

ただ、色々あったので…正直お礼参りはしなきゃ良かったと思っている。


その後、勇者を拝命したツネノリはメリシアさんと毎日セカンドとファーストに行ってはトラブルが無いか確認したりお父さんの代わりにお店の人達が仕事をしているのか管理をしたりしている。

土日はお父さんと同じで勇者を休みにしているので休みの度に修行をしている。


メリシアさんとの仲は順調でとても微笑ましいのだが、問題はサードがひとまず落ち着くまでは2人の仲を先に進ませないと言っていた。

それって責任重大で困るんだけどなぁ。

あ、瞬間移動は未だに壊滅的で見ていられない。



王様は8月の終わりに神如き力に目覚めた。

私より遅かったのは戦いから離れていたからだろうという話になった。

東さんと2人で神如き力の暴走を止めてみた。

ジョマの真似をして手を握ってみたら「チトセにやれるの?ジョマは?」と言われて激しくムカついた。

「神如き力の先輩に対して何その口の利き方?」と返したら「ふーん、先輩ね。じゃあくれぐれも僕に抜かされないように頑張りなよ」と言われた。

無論私は「ぐぎぎぎぎ」と唸った。

奥さんの1人リーンさんがそのやりとりを見て

「良かったねキョロ。

本当ジチさんの言った通りで嬉しいんだね。

チトセちゃん、ありがとう。

これからもキョロと仲良くしてやってね」

と言ってきた。嬉しい?感情表現が壊れていると思う。


私は王様が落ち着いてから奥さん達に謝った。

奥さん達は3人とも私を責めずに口々に

「キョロが自分で決めた事だから気にしないでいいのよ。それよりもそんなに思いつめずにあなた自身を大事にしなさい」

「キョロくんは自分よりも私達、そして私達よりも子供達が大事だから逆に頼らなかったらきっと怒るもの。これで良いのよ」

「ほら、チトセが気にする事じゃないでしょ?それに私達の旦那様はついに世界の管理まで任された半神半人なんて最高じゃない?お姉さんはみんなに自慢できるから大歓迎よ」と慰めてくれた。

王様の息子達との事はお礼参りと同じであんまり書きたくない。

なんであんなに似ているの?

そして「誰がチトセに気に入られるか?」じゃない。



ボウヌイの復興、亡くなった方を弔って瓦礫を全て撤去する復興の第一歩はゼロガーデンのみんなとセカンドガーデンの有志のおかげでセカンドの3ヶ月、外の1ヶ月で終わった。

遺体の損傷に関しては私が見ていられる範囲までジョマに治してもらったし、腐敗なんかも無かったことにした。


ジョマは最初にキチンと謝罪をした。

セカンドガーデンの皆はボウヌイの人達は本人瓜二つの新しい肉体で蘇生を行っている事を説明してジョマの略歴を見た事でお父さんの読み通り本当に許してくれた。

そしてその事や前向きなセカンドガーデンの人たちに触れてジョマはこう言った。


「千歳様や東が力を使いたくなる理由がわかった気がする。使える力があるのに使わないということの意味や辛さが知識ではなく感情でわかりました」

そして最後には瓦礫の撤去と慰霊碑の建造に力を使って手伝った。


その時に「女神様、自身の考えを曲げてまで力を使ってくれてありがとうございます」と言われたジョマは泣き崩れた。

そしてもう一度皆にキチンと謝った。

ジョマは元々心の優しい女神なのだ。

あの酒神みたいなロクデナシに囲まれて心を病んでしまったのだ。


ゼロガーデンの死者蘇生は約4ヶ月で終わった。

当初は0と1の間で延々と行われる予定だったが、何日かに一回は通常時間に戻した方がセカンドガーデンのスタッフの身体には安全と言うことで蘇生をしては通常時間で2日様子を見てからセカンドに連れて行くという事を繰り返していたら4ヶ月になっていた。

実は忙しすぎて東さんは魂を迎えに行く以外、ジョマも殆どノータッチで全部ルルお母さん達に任せてしまっていた。

なのでお給料は少し増えていてマリオンさんが飛んで喜んでいた。



そして2月に合わせてプラススタッフとマイナススタッフを用意してもらった。

こちらは「魂の部屋」を付けずにいろんな設定に基づいて人を作って貰った。

家族だったり恋人同士だったり、街のゴロツキ風のマイナススタッフも作ってもらった。



東さんは一番忙しい時を選んで3つのガーデンと作りかけのサードガーデンをサーバーの外に置いてくれた。

皆同じ気持ちで不可視の世界にした。

見たい時は地球の神様に頼むか東さんが許可をしないと基本的には無理だと言う。

例外的に注視、凝視などの視認を司る神様には勝手に見られてしまうと言われたので王様と神として堂々と神様の国に行ってちょっと光の剣を出しながら愚かな神でもわかるようにお願いをしてきた。


ガーデンを外に出した東さんは「忙しい時じゃないと気になってしまって大変だからね」と言って笑っていた。

笑えるようになってくれて嬉しかったし、ジョマも「東は私が支えるわ」と約束してくれた事も嬉しかった。


地球の神様には「絶対に見守ってよね」と釘を刺しておいた。


そして日本では東さんと北海道子のお付き合いが会社の皆に知られて東さんとジョマは何となく同棲する事になった。

引越しの手伝いを申し出たのだが、全部神の力でやってしまうと断られた。

ちなみにだが2人の引越し風景を見せてもらったら魔法使いが手を振るたびに家具が消えたり現れたりするCG映像みたいだった。

しかも部屋に合わせて家具が変わると言う何でもアリな内容で私も覚えたくなった。


多分、何となく直感だがジョマは結婚をして東道子になる気がしている。

それくらいに違和感がない。

そしてジョマは満更ではない。

今は空き時間に恋愛小説を読み漁っている。



駆け足で話してしまったが、これが8月末から3月末までの私達の話だ。

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