第205話 そうだ…、俺はコレを知っている。

「メリシア…だよな?」

「はい。助けに来ました!」


助けに?

確かに空から真っ赤な全身鎧で降り立った。

今、鎧が脱げた彼女は中に軽装の鎧と剣に盾を装備している。


だが、多少動けるようになったからと…武器が装備出来たからといってここは来ていい場所ではない。


「何だテメェは女ぁ!!」

そう言って1人の男がメリシアに斬りかかってきた。


「危ない!メリシア!!」

だが何の心配もなく、彼女は「遅いです」と剣をかわした後に男を躊躇なく斬り殺した。


「え?」


俺は間抜けな顔をして居たと思う。



「もう、ツネノリ様とお話ししていたのに!」

そう言ってメリシアが剣と盾を拾って俺の元に持ってくる。


他のプレイヤー達も唖然としてしまっている。

「もう少しお時間くださいね」と言うメリシアに誰も何も言えない。


「会いたかった。やっと会えました」

目を潤ませる彼女は俺に剣と盾を渡しながらそう言った。


「今日、終わったら2人きりになれますか?」

「何?」


「お疲れでも私との時間はください」

「あ…ああ。勿論だ…」


マズい、脳が回らない考えられないぞ。

何だコレは?



「あ、言伝が2つあります。

一つ目はキヨロスさんから

「ツネノリ、アーティファクト・キャンセラーは破壊できなくてもいい、一撃喰らわせるんだ。

そうしたら僕が何とかしてやる」

だそうです。よろしいですか?」


「あ…わかった」


「それと二つ目です。

私の先生からです」

「先生?」


「はい、マリオンさんからです。

「私が仕込んだ10年に比べたらこのくらいは簡単なんだから根を上げない!

忘れていても動けるでしょ?

アーティファクトが使えなくされても問題ないようにどんな武器でも使えるように仕込んであげたんだから頑張りな!」

だそうです」


「なに?」

そうすると最後の先生はマリオンさんだったのか?

待て、メリシアもマリオンさんを先生と呼んだ…。


「メリシア?お前には何があったんだ?」

「私は生き返る際にツネノリ様の横で一緒に戦ってツネノリ様を支えられる身体を願いました。

そしてマリオンさんがその力をくれました。

私の身体にはマリオンさんの経験が入っています。

だから今、私は戦えます。

私を頼ってください!ツネノリ様!!」


見計ったように入るジョマの実況。

乱入者が特別枠を助けるなら一緒に倒せと言っている。


「ツネノリ様はアーティファクト・キャンセラーを目指してください。援護は私がしますから!」

「助かる」


「ふふふ、嬉しい。

私が横に立ってお役に立てる」


そう言って目を輝かせたメリシアはショートソードを持って前を走る。

「ツネノリ様、今はお疲れですよね?ついて来てください。合わせられたら合わせてくださいね」


「何!?」

そのまま走ったメリシアは風のように走って前方のプレイヤーを斬る。

斬ったまま動きを止めずに更に前の敵に斬りつける。

左後ろからメリシアを狙う槍使いの女。

槍を持つ腕を俺が狙い斬る。


うずくまる所にメリシアが振り向いて止めをさす。

そして更にメリシアの後ろからくる敵を俺が斬る。


「ふふ、タイミングバッチリです。安心して前に進めます」

そうメリシアが笑う。

自然と身体が動く。


そうだ…、俺はコレを知っている。

身体の記憶で知っている。


「ツネノリ、遅い!私に合わせて!!」

「はい!先生!!」


「いい返事!

次!!私が左のやつをやる。

アンタは右の奴をやるんだ!いいね!!」


「私が素手から剣まで何でも教えてあげる。

まだ槍は持ったことがないからこの機会に一緒に覚える!

折角時間があるんだからやらなきゃ勿体無い!

ツネノリも折角だから楽しく強くなりなよ!」


「はい!!」


「よし、いい返事だ!!コレ終わったら鬼ごっこするよ!今日はツネノリが逃げるんだからね!8時間くらいは逃げ続けなよ!!」



急に色々なことが思い出されて来た。

8時間の鬼ごっこ…

…これ、虐待ではないのか?


「あ、ツネノリ様。

カリンさんとマリカさんからも一言あったんです」

「何?」


「「お母さんから聞いた。アンタがやれる子だったからウチのトレーニングが過酷になったんだってね」「この、バカ優等生。手を抜くとか覚えてよね!」ですって」


「…」

「何のことですか?」


「後で謝っておくよ」

「そうですか?」


そんな事を話している間もメリシアと俺は敵を蹴散らす。


「様子見だ、僕の隊は後方で様子見」

佐藤がトビーやイク達を集めて後方に行く。


このまま、この勢いならアーティファクト・キャンセラーまで行ける。


そう思ったのだがそんなに甘くはなかった。


目の前にはまだまだ沢山のプレイヤーがいる。

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