第204話 赤メノウ?

「ぐっ…」

「油断大敵だぜ?特別枠?」


そう言って出てきた男に俺は見覚えがあった。


フナシの山頂で殺した男達、それのリーダー格だった。


「飛び道具禁止って言われたから慌ててこん棒に持ち替えたけど悪くねぇな!ほら、立たねえのか?」そう言いながら男はこん棒を振り下ろしてくる。


「やっと仕返しのチャンス到来だ!嬉しいぜ」

そう言いながら男は止まらずにこん棒を振り続けてくる。


盾は最初の攻撃で吹き飛ばされている。

拾うタイミングをこの男がくれるとは思えない。

俺は背中に備えたロングソードに手を伸ばす。

くそッ、使う順番を間違えた。

それでなければ選択を間違えた。


重さに腕が悲鳴を上げる。

突剣にすれば良かった。



「散々暴れ回った気分はどうよ?好き勝手やって恨みを買って、こうやって嬲り殺しにされて楽しいか?役者でもこんなに恨まれたら嫌になるよなぁ!!」


なんとでも言え。

俺はもう一度力を込めて動く。


映像で見た流れる動きには到底及ばないがそれでも意識をして動く。


次の瞬間には男は血ダルマになって死んでいた。


盾を拾って最初のスタイルに戻したかったのだが、休ませることなく敵が迫ってくる。

そんな暇は無かった。


その後も多分80人くらいを斬り殺した。

センドウの洞窟で保護した人が時間を稼いでくれた事で回復させてくれたが、ここまで来るとあまり意味をなさない。


手の感覚が無くなってきた。

普通の剣はこんなに重いんだな。

ザンネ先生はこんな剣であの動きをしたのか…


そんな事を考えてしまって気が散って居たのだろう。


「うぉぉぉっ!」

突然聞こえた声に俺は吹き飛ばされた。

その声は佐藤で不意打ちを食らう羽目になる。


そして佐藤自身攻撃が決まった事に驚いている。


だが佐藤は中々だった。

「何寝てんだ!格好悪いぞ!立ち上がってかかってこい!」


咄嗟に話を用意して俺が立つのを待つ感じにする。


少し話を合わせて休みながらゆっくりと立つ。

そこにまた佐藤の一撃。


俺は冗談なしに吹き飛ばされる。


「だらしない!傷でも負ったか!?コレを飲め!

それとも疲れたのか?コレを飲め!」

そうして佐藤は回復の薬とスタミナ回復の薬を投げ付けてくる。


「それを飲んで正々堂々と勝負しろ!!」

まったく…、役者だな。


ありがたくそれを飲ませてもらう。

効果はよく分からないがあるのだろう。


「息を整えたらかかってこい!」

そう言った佐藤だったが「敵に塩を送るな!」とやってきた大女に吹き飛ばされて居た。


「休ませずに倒せばいいんだよ!」

そう言いながら女とその仲間達が斬りつけてくる。

さっきより身体は動くがキツい。


「もう寝ちまえ!」

隙をつかれてまた殴り飛ばされる。

それはプールの男だった。


ジョマ流に言えば4度目のダウン。

男は俺に馬乗りになると「4度のダウンを取れって指令だったんだが、何だコレ?」と言いながら殴る振りをしてくる。

「蹴り飛ばせ」と言われるままに蹴り飛ばす。


くそ、今のでロングソードも手放した。


だが何だ?

4度のダウン?


何が起きている?


そしてそこに合わせるようにジョマが「全員で一気に攻め落とすのか!?」と実況をする。


その言葉に釣られたプレイヤー達が一気に攻め込んでくる。


くそっ、残りの武器は手甲だけ、しのげるか?


そう思った時、天から物凄い勢いで飛んできた赤い影がプレイヤーを蹴散らした。


「何だ?」

赤い?父さん?ツネジロウ?


父さんが見てられなくなってまた飛び込んできたのか?


だがそれは違った。


俺はその赤い影を見て驚いた。

赤い全身鎧…真紅の騎士?


「赤メノウ?」

思わず口にしてしまう。


「脱ぎます!神様お願いします!」

その声は聞き覚えがある。

俺の大切な声。

だがまさか…

そして全身鎧が脱げて中から出てきたのは…


「……メリシア?」

「もう、心配させないでって言ったじゃありませんか?今からは私がツネノリ様を支えます。

ツネノリ様は1人じゃありませんよ」

そう言ってメリシアが微笑む。

この場所に似つかわしくない笑顔は相変わらずとても綺麗だった。

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