第180話 迷惑じゃないと言って欲しくて言ってしまった部分もある。
父さんが大人しくなってようやく千歳が「本題に入らせて」と言って話を母さんに戻す。
「どうした千歳?」
「多分、明日以降使うことになると思う。必要な能力の話がしたくて。ルルお母さんは次元移動に関して一緒に考えてくれた時の事がセカンド内でも使えると思う?」
「それは瞬間移動か?」
「うん」
「千歳が神如き力を使って瞬間移動を行いたいと言う事か?」
「うん、どうかな?」
「多分、神如き力は私からすれば高次の力、出来るだろう」
「ありがとう!じゃあ、王様に続きは聞いた方が良いね。王様呼んで」
「チトセ?」
「またごめんね。「瞬きの靴」について教えて!」
千歳がそう言うと次元球から何も言わずに手が出てくる。
「基礎理論は昔のルルお母さんと東さんの会話も読んだし、ルルお母さんとの練習でイメージも出来ているんだけど瞬間移動のプロに聞きたくてさ。よろしく」
「【アーティファクト】」
「うん、自分を移動するんじゃなくて世界に自分のポイントを誤認させてそのポイントに移動させる力、イメージ…うん大丈夫。王様ありがとう!!」
「大丈夫そう?」
「うん、多分さっきのジョマの会話が思った通りなら明日は大丈夫。明後日はまだ読めないから何をされるか…」
千歳がそう言った後で、皆が代わる代わる一言ずつ励ましの言葉を俺達にくれる。
母さんは他の母さんにならずに「全部帰ってきてから面と向かって聞け」と言い、父さんは「明後日…と言うかこっちだと明日朝会うから変な挨拶は無しだ」と言った。
「大変だけど2人ならやれるよ!」とマリオンさん。
「仲間だと思ったプレイヤーが敵なのは参っちゃうねぇ、でも美味しいご飯で元気が出るならお姉さんに言ってね。お弁当を送るからさ!!」とジチさん。
「ガキ共!こんなもんに負けんじゃねぇぞ!お前達ならやれんだからよ!」とドフお爺さんがコメントをくれて、千歳が知識でだけ知っていたので「ガミガミさん!!初めまして!イメージ通りだ!!」と喜んでいた。言われたドフお爺さんは「…なんだよ、ルル達の所の娘までガミガミかよ…」とがっくりしていた。
「僕達も頑張って人形を作るから変に被害を意識しないで戦いなね」
これはペックお爺さんだ。
「こら、ツネノリ!あんた優等生なんだからしっかりしなよ!」
「ねー。妹に助けて貰ってばかりなんてみっともないよ!」
「カリンとマリカか?久しぶりだな」
「僕も居るよ。まったく…ツネノリが凄いとまた母さんからツネノリと比べられちゃうよ。でも比べられてもいいから怪我しないで帰っておいでよ」
「リークか?元気そうだな」
そうか…
「3人とも人形の件で来てくれているんだよな。メリシアの事は本当にありがとう!!」
「はいはい」
「いいって」
「僕も手伝えてよかったよ」
「あ、チトセちゃーん!」
「私達と年も近いんだから一緒にお茶しようね!」
「はい!」
「これで、みんなかな?じゃあ最後だよツネノリ」
「リーク?」
「ツネノリ様、千歳様」
「メリシア!」
「メリシアさん!元気そうだね。私は作戦を考えたいからお風呂に行ってくるよ。後は…。駄目だ。私の次元球だそれ。メリシアさんも自分の次元球があるんだよね?それでツネノリに連絡とって」
そう言って千歳は次元球を持って部屋の外に行ってしまう。
次に繋がった次元球からは「ほら、メリシアは部屋でツネノリと話しなよ」と言ったマリオンさんの声が聞こえた後で「ツネノリ様、ご無事でよかった。ずっと心配をしていました」と聞こえてきた。
「何とか無事だ」
「はい」
「それと、メリシアの家に厄介になっている」
「ご自分の家だと思って疲れを癒してくださいね」
「ありがとう。熱はどうだ?」
「はい。もう問題はありませんよ。今は身体をセカンドに慣らす為に激しい運動もしていません」
「そうか。イベントが終わってからかも知れないが早く帰れると良いな」
「私が帰る日までツネノリ様はセカンドで私を持ってくれますか?」
そうか、イベントが終了して即座にゼロガーデンに帰るとメリシアに会えないのか。
そして俺が戻るまでメリシアが待つと言う事はおじさん達に寂しい思いをさせる事になる。
「そうだな、こうして話せるのはありがたいんだが、やはり会いたいな」
「私もです。贅沢ですが、声だけでは物足りなくなってしまいました」
「俺もだ、前のようにメリシアを近くで感じたい」
「はい。また同じ場所で同じ時間を共有したいです」
「ああそうだ。おじさん達が赤メノウを探していたから俺が持っていると伝えたぞ」
「あ、父たちに言わなかったかも知れません」
そうしてメリシアが笑う。
「後はそうだ!申し訳ないと言うか…」
「はい?」
「タツキアで俺とメリシアの事が噂になっていて、雑貨屋の老夫婦から色々言われたんだ」
「まあ、そうなんですか?」
「ああ、俺がメリシアを好きでたまらないと思われている」
「…」
「メリシア、黙らないでくれ」
「いえ、…他の人から見ると好きに見えるんですね」
「そうみたいだ」
「それが申し訳ない事なんですか?」
「いや、メリシアは迷惑かな…と思って」
「もう、迷惑じゃないってわかっていて言っていますよね?」
次元球の向こう側の声が嬉しさ半分、呆れ半分でそう言う。
「済まない。迷惑じゃないと言って欲しくて言ってしまった部分もある」
「はい。迷惑でも申し訳ないわけでもありません。嬉しいです」
「嬉しい…か、良かった」
「はい。ツネノリ様の好意が私に向いていると他の人の見立てでも嬉しいです」
俺は嬉しくて呆けてしまった。
「…」
「ツネノリ様も黙ってしまっていますよ」
「あ、ああ…済まない」
「ふふ、やっぱり早く会いたいです」
「ああ、俺もだ」
そうして俺にとっては幸せな時間が過ぎていく。
少しすると温泉から戻った千歳が「うわ、やっぱりまだ話してた!」と言って「ツネノリ、作戦会議するからその前にお風呂。次元球はおじさんとおばさんに渡す。メリシアさん!ツネノリお風呂に入るから次元球はおじさんとおばさんに渡すね!」とテキパキと仕切ってしまう。
「はい。わかりました。それではツネノリ様。ご無理はなさらないでくださいね」
「ああ、ありがとうメリシア」
「はやく逢えますように」
「ああ、一日も早く再会しよう」
そうして俺は次元球をおじさんとおばさんに渡して風呂に行く。
おじさん達もメリシアと話したいだろうから少し長湯をしてもいいかもしれないなと思った。
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