第167話 僕の教えた事で君たちが助かったのなら僕も凄く嬉しい。

「ツネノリ?」

「キヨロスさん、ありがとうございました。おかげで悪魔も倒せました」

「王様?ありがとう。助かったよー」


「2人とも、無事で良かったね。でもさ…」

僕は2人が心配でつい小言を言いそうになる。


「うん、ごめんね。本当私も油断していたよ。どこかでこの力があればツネノリも守れるって思っていたし、私自身も怪我をしないと思っていたよ」

「俺もです。千歳は神如き力を得たし、俺もザンネ先生やテツイ先生の教えもあるから大丈夫だと慢心していました。本当に今日は助かりました」


「…う…うん、わかっているならいいんじゃないかな」

ここまで素直に謝られて反省されるとは思っていなかったので僕は面食らってしまった。


「あらら、キヨロスくんもタジタジね。素直に謝って貰って、反省もしてくれて。本当ルルとツネツギの子供達はいい子達ね」

「うん…本当にいい子達だ」


「あははは、ツネノリ!!聞こえている?アンタ達が凄すぎてアイツが目を丸くしているよ」

「マリオン、恥ずかしいからやめてよ」

僕は思ったままを言う。



「ねぇ、そこって皆居るの?」

「さっきのメンバーにジチが入っただけだよ?」


「あ、じゃあルルお母さん居るんだ?ルルお母さん!」

「どうした千歳?」


「ごめんね。ルルお母さんも心配したよね?明日の悪魔との戦いは気を付けるからね」

「母さん、俺もごめん。千歳の事はちゃんと守るから…」

「ツネノリ違う!ルルお母さんはツネノリの事も心配なんだよ!」

「それを言うなら千歳だって人間をやめたら母さんも千明さんも悲しむんだぞ!」


次元球の向こうでツネノリとチトセが言い合いを始めてしまうが決して険悪なものではなく楽しそうな兄妹の姿だ。


「はいはい、2人ともそこまで。ルルだってわかればいいって顔に書いてあるし、兄妹喧嘩何て初めてで何て言って止めていいか悩んでいるからやめなさい」

「はーい」

チトセが素直に返事をする。


「ジチさん?」

「そうだよ、お姉さんだよ。どうしたのツネノリ?」


「10年間の修行ありがとうございました。俺、ジチさんにもお礼を言いたくて…」

「おやまぁ…、思い出したのかい?」


「いえ、キヨロスさんの「意思の針」で見えました」

「あらら、それってやって良かったのかねぇ?」


「しょうがないよ、剣を飛ばす修行で最終日にあんなに喜んでツネノリを抱きしめて号泣していたのにその部分を外して説明が出来ないよ」

「何!?ジチよ!ツネノリを抱きしめて号泣だと!!」


「あー、ルルお母さんが怒った」

「怒っていない!!」


「怒っているよねーチトセ!」

「マリオン!!」

人数が多いからひとしきり皆が喋ってしまって色々大変だが何とかなってよかった。


「ジチさん、俺料理の記憶が身体に残っていたみたいで、昨日メリシアの家で料理をしたら上手にできました。次元球から手を伸ばして食べたメリシアがジチさんの味に似ているって言っていました」

「嬉しいねぇ、じゃあ帰ったらルルにも作ってあげるんだよ」


「はい!」

ツネノリの真っ直ぐな返事にジチさんが嬉しそうな顔をする。


「ねえ、私にも料理を教えてくれる?」

「千歳!?お前まで何を言う!?」

ルルが慌てて千歳に呼びかける。


「えー、だって私も料理を覚えたら、遊びに行った日にルルお母さんは楽できるでしょ?そりゃあルルお母さんと2人の料理は凄く楽しかったんだけど、親孝行…したいと言うか…」

「千歳…」

そう言ってルルは泣いてしまう。


「いいよいいよ!お姉さんが教えてあげるからいつでもいらっしゃい!!」

「うん、ありがとう!!」

千歳が嬉しそうにそう言った後で「あ」と言い出した。


「どうしたのチトセ?」

「うん、メリシアさんで思い出した。ジョマとも話していたんだけど後で今日の戦いと終わった後にここで話をするまでの映像をメリシアさんに見せて貰ってもいいかな?それで私が一言欲しいって言っていたって言ってくれる?」


「ああ、でも映像は神様に頼まないと」

「それ位お安い御用だよ」


「神様が良いって言っているよ」

「良かった。それでさ、王様」


「何?」

「本当に今日はありがとう、王様の剣と経験が私達を助けてくれたよ」


「本当、俺も感謝しています。ありがとうございます。それと修行の時も俺が出来ないでも見捨てないで最後までアーティファクトの剣を使えるようになるまで教えてくれてありがとうございました」


「2人とも、今日の勝利は君たちの勝利だから僕は関係ないよ。でも僕の教えた事で君たちが助かったのなら僕も凄く嬉しい」


「「ありがとうございました!」」


そう言って僕達は通信を終わらせる。

チトセとツネノリ、何て素敵なんだろう。


「ルル」

「何だ?」


「やはりチトセをうちのお嫁さんに…」

「駄目だと言っておろう?」


「それとツネノリにうちの娘を…」

「メリシアが居るだろう!!」


「僕も3人の奥さんとうまくやれているからツネノリも…」

「断る!!」


ルルが怒っている最中に神様がコロセウムの部屋での出来事を見ていた。

「あー、チトセがメリシアに見せろって言った意味が分かったわ」

「お姉さんならチトセにありがとうって言うわ」

「ああ、ツネノリの鈍感力は誰譲りなのかな?」

マリオンとジチさんと神様が口々に言っている。


「何があったの?」

そうしてルルと僕を含めてもう一度見る。


ジョマに「千歳様、お兄様の鈍感力もなかなかですね」と言われてもまだわからないツネノリの鈍感力は相当なものだ。

僕達はついルルの方を見てしまう。


「何故私を見る!?鈍感なのはツネツギに決まっておろう?私ではない!!」

そのやり取りでひとしきり笑った僕達は良い時間になっていたので朝ごはんの支度を手伝ったり寝ている皆を起こしたりした。


神様を朝ごはんに誘って皆で映像を見ながらツネジロウにジチさんと2人で師匠だった事を名乗り出ると「ああ、謎だった4人目はキヨロスとジチだったか…。まあ、そのおかげでツネノリと千歳も無事だったからあまり言えないんだがな、頼むからルルがヤキモチを妬くから抑えめに話してくれ」と言って結構あっさりと終わった。


マリオンが調子に乗ってツネノリが出来る子だった事で僕が厳しくなったと言っていたら「ツネノリめぇ…」「本当アイツって優等生タイプだよね」とカリンとマリカが不満を口にしてリークは「比べられる方は大変なんだぞ」と言っていた。


「え?リークって誰に比べられるの?ナックなら「お前はお前なんだからそれでいいんだ」って言いそうだけど」

「母さんです。母さんは「ツネノリ君は兄弟が居ない分ご両親の為に頑張っているんだから、見習ってね」って言うんですよ」


「ああ、マリーはねぇ、たまに話すとリークの心配ばかりしていたからね」

「うん、リークはさぁ、マリー伯母さんが優しいし」

「うちみたいに兄弟が沢山で競争しないから優しすぎるんだよね」


「まあ、ナックも優しいから、リークが悪い訳じゃないと思うよ」

僕は流石にここで厳しく言っても良くないと思ったのでナックは優しいと言っておいた。


普段の僕なら「ナックは甘いんだよ」って言うんだろうけど、今日は少しだけ僕も甘い。

それはツネノリとチトセの成長を見たからかもしれない。



ああ、忘れていた。

映像を見たメリシアは即座に自分の次元球でチトセに連絡をして「千歳様、本当にありがとうございます。ツネノリ様の鈍感力がよくわかりました!!」と言った直後。

ツネノリの次元球に連絡をして「もう、あまり心配させないでくださいね。お怪我はどうですか?今は痛みが無くて良かったです」と話して存在をアピールしていた。


「メリシアって結構危ない子だねぇ…」

「そうかな?」


「そうだよ、これがもし私達みたいな夫婦だったら残りの2人は困っちゃうよ」

「じゃあ、ツネノリは諦めてチトセをウチに迎え入れよう」


「そうだねぇ。チトセには誰が似合うかな?」

「これが終わって城に帰ったら子供たちを鍛えなおさないとね」

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