第166話 戦闘力だけではない純粋な心の強さに僕は感動をした。

「キヨロス…、お前がツネノリの3人目の師…、何を教えた?」

「ルル、それはもう直ぐわかるから見ていて。

神様、教えるのは直接手を下すからね。

次元球、接続先をツネノリの次元球。

【アーティファクト】」

僕は次元球に手を通して準備を済ます。


ツネノリが天に向かって神様の名前を呼ぶ。

「受け取れツネノリ!【アーティファクト】!」

僕は「意志の針」を使ってツネノリに僕との日々を教える。


ツネノリは全てを知っただろう。


火、水、氷、雷の4つのアーティファクトから剣を生み出して、最後に光の剣を用意し9本の剣を作り上げた。


「光の剣…、キヨロスはそれを教えたのか?」

「ああ、それ以外もね。

神様に呼ばれた時に僕は4番目って聞いていたけど、それまでに覚えたのがザンネの二刀流、テツイのアーティファクト、それと本当の3番目の戦い方。

だから僕からはアーティファクトの独創性みたいなもの、僕の使い方を教えたんだ。

勿論、「革命の剣」「万能の鎧」「瞬きの靴」も「究極の腕輪」の中で魂を消費しないでも使えるようにして使わせてみたよ」


「それでアーティファクトの剣か…」

「うん。僕の装備はあげられないからね。

威力は一段以上落ちるけどツネノリなら問題無いと思うよ。

ただ、「瞬きの靴」だけは先にテツイから高速移動を学んだせいか上手くならなくてさ、特に瞬間移動は壊滅的だったんだよね。

狙った場所の近くまでは行けるんだけど殆ど外していたよ」

僕はあの日々を思い出して笑ってしまう。


「キヨロス、ジチを起こしてあげよう」

「はい」


僕はジチさんを起こしに行く。

「ジチさん、寝てるところごめんね」

「ん?いいよ。どうしたの?」

寝起きのジチさんは優しく僕に微笑んでくれる。


「うん、僕達がツネノリの師匠ってルルに知られたから、付き合って欲しいんだ」

「そっか、そんなにツネノリはピンチだったんだね」

ジチさんは嬉しそうな悲しそうな複雑な顔で僕を見る。


「でもあの3人で過ごした日々のおかげでツネノリは…もちろんチトセもピンチを切り抜けられたよ」

「嬉しい。私達の…あの10年が活かされたんだね。お姉さんは嬉しいよ」

ジチさんは感極まって僕に抱き着いてくる。


「僕もだよ。ルルが待っている」

「了解だよ。行こう」

僕はジチさんを連れてルルの元に戻る。



「何故ジチも起こす?」

「僕とジチさん2人が4人目の師匠だからだよ」


そう言って僕はルルに説明をした。

あの日、神様から呼ばれた時、ツネノリにはせめて美味しいご飯で楽しく修行をして欲しくてジチさんも呼んだ事。


当時、僕の子供達はまだ幼くて、それより長く過ごしてしまったツネノリを僕達の子供のように思ってしまった。

僕の子供達も勿論素直で可愛い。

だがツネノリも素直で可愛くて、そして強かった。


その前の30年の日々がそうさせたのだろう。

それがわかっていてもツネノリの強さ、戦闘力だけではない純粋な心の強さに僕は感動をした。


僕はそこから育児方針を変えた。

勿論、リーンやフィルさんにツネノリとの10年を話して納得をしてもらった。

10年もジチさんとツネノリと家族をした事でヤキモチを妬かれて大変だった事は言うまでも無いし当分の間はジチさんと僕の風当たりはキツかった。


ツネノリが見せてくれた才能、可能性。

それは仲間を含めた僕達の子供達に対して、厳しくても徹底的に伸ばしてあげようと思えた程だ。

だからリークにしても甘えや妥協は許さない。そしてちゃんと達成感を得て成長の入り口に立てた。それを嬉しく思う。

そんな話を僕はした。


「ふぅ…、だから神様はキヨロスに説明する時にツネノリの名を出すように言ったのですね」

「ああ、キヨロスはツネノリの成長を望んでいるからね」


「それで、ジチも10年も付き合ってくれたのか」

「うん、お姉さんも空き時間でツネノリ仕込んだしね。一応師匠だよ」


「何?」

「聞かれるまでも無いけどお姉さんの特技は料理だからね。ツネノリと一緒に料理をして色々教えてあげたから覚えてなくても料理上手でしょ?」


これはリーンやフィルさんには言わなかった。

3人の空間での生活でジチさんはツネノリの母として料理を教えてくれたり、うまく出来ないと悔しくて泣き出した日には優しくあやしてくれたりした。

最後の1年なんかは僕の修行よりジチさんが料理をもっと教えたいと言って教えていたほどだ。


「…本当なのか?」

「え?ツネノリって料理下手に育ったの?」


「いや、ウチでは手伝いくらいで主に私が料理をしていたからやらせていないのだ」

「あーあ、お姉さんがせっかく仕込んだのに勿体ない。帰ったらやってもらいなよ。きっとルルも楽が出来ると思うよ」


ルルはショックだったのだろう。

「私のツネノリがどんどん人のモノになってしまう…」とブツブツと文句を言っていた。


「ごめんよルル。でも私達は教えた事でツネノリが今日助かってくれて嬉しいよ」

「…致し方ない…、だがお前達には何人も子供がおろうに!」


「あーあ、それよりこの話を子供達が聞いたらみんなツネノリを恨みそうだね」

「マリオン?」


「だってコイツが子供たちに厳しいのってツネノリが出来る子だったからでしょ?」

「…マリオン、酷くない?」


「嘘じゃないでしょ?あーあ、ツネノリ恨まれるー。とりあえず朝になったらカリンとマリカ、それとリークに教えて反応見てみようよ」

「こら、やめよマリオン!」

ルルが慌ててマリオンを止めている。


「まあいっか」と言ってマリオンが笑って諦める。



「そのツネノリが話したいそうだ。千歳が神如き力を使おうとしているから僕が止めたよ。キヨロス、自分でツネノリにつないでごらん」


師匠としてツネノリに話せる。

僕の心はちょっと楽しみになってしまった。

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