第160話 大丈夫。私は私をやめない。
「よせ!せめてスタッフが避難するまで待つんだ!」
ツネノリがクロウを止めるがクロウは「知るか、俺の居場所はここにしかない。ここで結果を出さなきゃダメなんだ」と言うと「爆裂」と言った。
ツネノリは咄嗟に盾を張って防ぎ私の盾はクロウの近くに居たスタッフを守った。
だが観客席は吹き飛んで瓦礫がスタッフやプレイヤーに当たったりと散々な事になる。
…やられた。
スタッフに怪我をさせてしまった。
私くらいの女の子が蹲って足から血を流している。
あの怪我は残るかもしれない。
子供を庇ったおじさんは頭から血を流して動かない。
瓦礫の当たりどころが悪くて苦しんでいるおじさんも居る。
私は気付けたはずなのに。
もっと気をつけられたはずなのに。
私のせいだ。
頭きた。
後悔させてやる。
「ツネノリ…時間稼ぎして」
私は光の剣を一本クロウの肩に突き立てると目の前で戦うツネノリにそう話す。
「千歳!?」
「回復したら後は私がやる。
とりあえず時間稼ぎね」
そう言って光の剣は爆発をする。
肩から先を失ったクロウが爆発の衝撃で吹き飛ぶ。
「回復…、王様みたいにやる。
人間には出来ない事。
神なら出来る事。
神と人、その間の私にしか出来ない事…」
私の髪は真っ赤に光る。
大丈夫。私は私をやめない。
「イメージ、全体回復。
コロセウム全体。
クロウは仲間外れ。
「究極の腕輪」の代わりは私。
【アーティファクト】」
私はルルお母さんに貰った回復のアーティファクトを装備して回復の力をコロセウム全体に向けて使う。
プレイヤーもスタッフももちろん私も回復する。
身体の痛みが引いた私は回復を止めて立ち上がる。
観客席を見ると、怪我をしていた人たちは少しマシになったのだろう。
動けなかった人も動けるようになって避難をしてくれる。
良かった。
でも私は私を許せない。
クロウだけは私が倒す。
ツネノリの前に出て行って「交代だよ」と声をかける。
「ああ、大丈夫か?」
「多分ね。ツネノリは観客席に行って逃げ遅れた人を守って逃したら帰ってきてよ。
そうしたら2人で締め上げよう」
ツネノリは了解したと言って観客席に行く。
「ジョマ、私は私だよね」
心でジョマに話す。
「危なくなったら止めればいいのね?」
「頼んでいいの?」
「まあ、今回は大目に見るわ」
「ありがとう」
私は倒れているクロウを見下ろす。
「クロウ、早く再生しなよ。そうしたら今度は私が相手だよ。
アンタは観客を巻き込んだから許さない」
「女…、この腕はお前が…」
「そうだよ。悔しい?早く治して向かっておいでよ」
クロウは息を整えると肩から腕が治る。
やはり相当なエネルギー消費なのだろう。
体色は緑がかった青になっていた。
アーティファクトの同時発動。
紫水晶の盾に近い盾…ううん、檻。
後は爆発する剣と盾。
私には風のアーティファクト。
私は見せてもらった王様の動きを意識する。
クロウに取り憑かれる事なく回避と攻撃をする。
剣は爆発も出来るが今はやらない。
その時ではない。
クロウは盾への攻撃は躊躇している。
冷静な判断だ。
盾が一枚あるだけで攻撃が甘くなるのは楽チンだ。
しばらくするとクロウは痺れを切らしたのだろう。
爆裂を使う動きになる。
端末プレイヤーだからか動作が一定になるので対応しやすいのがありがたい。
「檻!【アーティファクト】!」
私は咄嗟に檻を発動する。
「閃光」
クロウは爆裂ではなく閃光を使ってきた。
だが関係ない。
私の作った光の檻はまるで間接照明みたいに光っただけで外に熱も何も通さない。
「ぐあっ!!?」
光が落ち着くとクロウは折の中で焼けただれて苦しんでいた。
「女…、何をした…?」
「アンタの攻撃を通さない光の檻を作ったの」
「バカな…そんな事が…」
「アンタには出来ない。
私には出来た。
それだけでしょ?」
王様の記録を見たときに王様が敵を悔しがらせる為に使ったフレーズ。
私はそれを真似する。
「クソガァァァッ!」
「格好悪いね。
叫んでいないで早く回復しなよ」
焼けただれた身体が元に戻るとクロウは緑色になっていた。
「こんな檻!」と叫びながらクロウが檻を殴るが檻はびくともしない。
硬い盾のイメージではなくて「紫水晶の盾」が持つ絶対的な盾をイメージして作ったのだ。生半可な攻撃で壊れる道理はない。
「ねぇ?まだ?」
私は待ちくたびれた顔で挑発をする。
「小娘ガァァァッ!!「爆裂」!!」
私の挑発にキレたクロウが「爆裂」を使う。
バカな奴。
黒い時のクロウですら破れるかどうかの檻なのに緑が使った所でどうと言うこともない。
全て檻の中で発動をして自身の身体を痛めつけるだけだ。
「ガァァァッ!!?」と言う叫び声を上げて膝をつくクロウ。
「バカな奴、もうおしまいかな?」
私は傷だらけのクロウに言い放つとクロウは「まだだ!一回、二回防げたくらいで調子に乗るな!壊せるまでやってやる!「閃光」!「爆裂」!「爆裂」!「閃光」!「爆裂」!」と閃光と爆裂を滅多やたらに使い出す。
確かに単発よりかは効果があったので檻が一瞬ガタついた。
だがコストパフォーマンスは最悪だ。
発動させた閃光と爆裂が檻の中で暴れまわりその全てがクロウの身体を襲う。
かなりのダメージを負ったのだろう。
クロウは仰向けで肩で息をしている。
端末側がそう認識しているだけで向こう側のクロウは端末をガチャガチャやりながらキレているかもしれない。
「もうやれるは事ない?それじゃあ終わらせるね」
私はそう言うと檻の中から空気を抜く。
悪魔だって生物だ。
多分空気が無くなれば死ぬ。
…
……
………
死ぬのだろうが苦しさから喉をかきむしるクロウはグロい。
「うわっ、見てらんない。爆発に切り替えよう」
そうして私は檻全部を爆発させる。
これで終わりかな?
そう思ってクロウを見てみると辛うじて生き残ったようで赤と橙色を合わせたような朱色みたいな体色で苦しそうに息をしている。
「もう、終わりだね。バイバイ」
そう言った時にクロウの身体に異常が起きた。
身体が跳ね上がって一瞬で傷が治る。
そして「ガァァァッ!!!」と咆哮をあげてから私に襲いかかってきた。
「何コイツ!?」
「おっとー!クロウの身体に付けた「悪魔のタマゴ」が残り2個になったので暴走状態になりました!
果たしてベテラン端末プレイヤーは暴走状態でも扱い切れるのか!!?」
残り2個?
そうか、クロウは身体に沢山の「悪魔のタマゴ」を付けたから身体が黒かったんだ。
それを私が削って行って残りが少なくなったから暴走状態…。
「千歳!気をつけろ!」
「ツネノリ!暴走状態もクロウが動かすの?」
しまった。
グロいなんて言わないであのまま空気を抜いてしまえば良かった。
「来るぞ!」
その声で前を見ると黒い時と遜色ない感じでクロウが攻め込んでくる。
クロウは余程頭にきているのだろう。
私を徹底的に狙ってきている。
だが暴走状態と言うだけある。
細やかな攻撃は無くなっていて大振りな攻撃が目立つので風のアーティファクトを使って高速移動で切り抜けながら腕につけた弓矢から爆発する弾を飛ばして戦う。
ツネノリは私が攻撃の合間にできる隙を見計らってクロウに斬り込んでくれる。
「硬い、なかなか大変だよ」
「アイツ、千歳ばかりを狙うな…」
「あー、頭きて滅茶苦茶挑発しちゃったんだよね」
「何!?まったく…、それで髪が赤いのか…」
「反省します。
でもスタッフが巻き込まれて頭にきたの」
「まったく…、とりあえず倒すぞ!」
今のところ負ける気はしないが長引く気しかしない。
「残り後1時間!この戦いはどうなる!?挑戦者クロウに勝ち目はあるのだろうか!?」
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