セカンド ガーデン

第159話 皆逃げて！！

濃紺に近づいたクロウが「くそっ…、このままやられてたまるか」と言い出した。

来るんだ…

私は2枚のうち1枚の縦を高速で飛ばしてツネノリの前に配置する。

もう1枚は念の為に私を守る。

「爆裂！！」

ほらきた爆裂の力だ。

悪魔の体色も気になったし強さも気になっていた。

あの身体から放たれる爆裂は想像通り強力で盾を張らなければツネノリは死んでいただろう。

それでも盾ごと吹き飛んだツネノリが居て、私のそばにフワッと降り立つ。

風のアーティファクトで受け身を取ったのだろう。

あれ、今度真似をしよう。

「千歳、助かった。

この盾はお前だろ？」

「うん、嫌な予感の正体は閃光と爆裂だと思ったの。

ゼロガーデンで悪魔を倒した王様の記録だと閃光は肌が焼けただれる程の高熱で、爆裂は周囲のものを破壊しながら吹き飛ばしていたから。盾が間に合って良かったよ」

「ああ、千歳盾のおかげで助かった」

「千歳…盾？また変な名前だー」

「ダメか？」

「なんでもいいや…私はまだ動けないから盾で援護するね」

「助かる」

そう言ってツネノリがクロウに接近して再度切り刻む。

防御に私が参加をした事でツネノリは攻撃に専念している。

ここは兄妹の本領発揮だ。

ツネノリに遠慮なんかさせない。

私も遠慮なんかしない。

くそー、身体が動けば仕返しするのになぁ…

あ！

いい事思いついちゃった。

イメージ！

するまでもない奴！！

「【アーティファクト】！」

私は盾に機能を載せる。

「ツネノリ！」

「千歳？」

「一度息を整えて、動きは抑え気味にして！盾でツネノリが休めるようにするよ」

そう言って盾を細かく動かす。

ツネノリを狙いたいクロウからしたら忌々しいのだろう。

段々と苛立ったクロウが狙いを盾に切り替える。

来た！

「ツネノリ、伏せて！」

「何！？」

その瞬間、ツネノリが伏せるのと同時くらいにクロウが盾を殴る。

殴られた盾が眩しく光り直後に衝撃と轟音。

そう大爆発だ。

巻き上がった埃とかが無くなった所で肘まで吹き飛んだクロウが居た。

悪魔は爆発には弱いのだろう。

そう言えばあの三匹の悪魔も爆発で痛めつけたっけ。

「うわっ、グロい…。でもいいや。ツネノリ！畳みかけて！」

「おう！」

そう言ってツネノリはクロウを休ませる事なく攻撃をする。

王様に見せてもらった情報の通りなら悪魔の傷はすぐに再生する。

今までイベントにいた悪魔達はそうでもなかったのだが、きっとクロウは違う。

少しでも隙を与えれば回復すると思う。

その時、はじめて私はとんでもないものに気がついた。私の少し前から地面が削れていたのだ。

「何これ？」

そしてそれはやや真ん中で盛り上がる。

まさか…

だがそれしか考えられない。

まずい。

ツネノリとクロウは最初みたいにコロセウムの真ん中あたりにいるわけでは無い。

「ジョマ！」

「なぁに？」

私は即座にジョマを呼ぶ。

ジョマは姿を見せずに声だけで返事をする。

「観客席の流れ弾ってどうなっているの？盾とか張ってあるの？」

「あらやだ、やると思う？」

そうだと思った。

「今の位置で閃光や爆裂を使われたら観客は何人が巻き込まれるの？」

「んー…50人…70人くらいかしら？」

やはりだ、あの威力…範囲の攻撃をやられたらスタッフの人達が巻き込まれる。

「アナウンスして！クロウが技を使ったら巻き込まれるって！

先に私がやるからジョマは話し合わせて！」

「ふふ、私1人でやってとかなら断ろうかと思ったけど千歳様もやるならいいわ」

私はツネノリに連絡する。

「マズい事になったの、盾は一瞬しまうから気をつけて！」

「千歳？大丈夫か？」

「うん、私よりスタッフ達がマズいから、ごめんね！」

私はそう言うと盾を解除してメガホンを生成する。

メガホンから声が出せるようにした。

私は大きく息を吸い込むと「皆逃げて！！」と叫ぶ。

騒がしかった会場は一気に静まり返る。

「コロセウムの地面を見て！

削れているよね？

クロウの爆裂はこれだけ大きな範囲に攻撃をするの！

今の位置で使われたら近くの観客席は巻き込まれる！

だから逃げて！」

その声で何人かはすぐに立ち上がって観客席から離れる。

「後は閃光という技も危ないから、それの範囲は爆裂と変わらなくてももの凄い光で肌が焼けただれるの！」

私がそれを告げた所でジョマが現れる。

「彼女の忠告は本当なの、観客のみなさんは自己責任で見て自分の判断で逃げてね」

その一言で観客席はパニックになる。

もう、ジョマの意地悪。

「プレイヤーは盾を張りながらスタッフの避難を優先して。

スタッフは早く逃げて！」

私はメガホンを解除してツネノリとクロウを見る。

クロウは今の間に腕が再生していて色は青に近くなっていた。

多分、再生にもの凄いエネルギーを使うのだろう。

だが問題はそこでは無かった。

クロウは「防いでみろ」と言って構えをとった。