伊加利 千歳の章⑩人のまま神として。

第158話 私のお願いを聞いて欲しいの。王様にしか頼めない事だから。

あいたたた…

ゼロガーデンでのはじめての大きな負傷。

油断してたかな?


とりあえず私の怪我なんかより問題はツネノリだ。

ツネノリのあんな顔は見たことがない。

多分「千歳が怪我をしたのは俺のせいだ」くらいに思っているはずだ。


ツネノリは優しいのだがなんでも「俺」「俺」言い過ぎなのだ。

そして今目の前でツネノリはクロウに圧倒的な攻撃をしているが嫌な予感は消えない。


まずいな。

私は次元球を取り出すと神如き力を発動させる。

これは一昨日ルルお母さんと練習した。

私から連絡をする方法。


「無事か千歳!?」

「痛いけどなんとかねー。

どこも折れている感じもないし休めば何とかなるよ」


「それでどうした?」

「今の戦いは見てるかな?」


「ああ、私とマリオン、それとキヨロスに神様が見ている。ツネジロウは寝かせておかないと次にそっちに行った時に役立たずだから眠らせておる」


良かった。

一番話したい相手がいる。


「ルルお母さん、王様に代わって」

「チトセ?」


「朝からごめんね。

王様が居てくれて助かったよ。

王様は何回も1人で悪魔と戦ったんだよね。

昨日、記す者から記録は読ませてもらったんだけど心情とか無くてさ、教えてもらいたいんだよね。

「意志の針」で教えて」

「僕は構わないけど、感化されない?」


「うん、気をつける」

そうすると次元球からこの前と同じく指が出てくる。

私は躊躇なくその指に付く針に手を当てる。


「お願い」

「【アーティファクト】」


悪魔と王様の戦い。

高速移動で翻弄しながら「革命の剣」で戦う。

攻撃を鎧の付加機能と剣を盾にして防ぐ。

記憶の中に居る悪魔は閃光と爆裂を使ってきた。

多分これだ、クロウはまだこの力を使っていない事が違和感なんだ。


「王様、もう少し付き合って。王様の知っている盾について教えて。今現存する最強の盾って何?」

「最強の盾?それは僕の奥さんが使う「紫水晶の盾」だよ」


「それ、記録で見た。王様が使ってジョマの使いを圧倒していたよね。あの「創世の光」を真似た「創世の剣」を圧倒していた」

「そうだ。その使い方も欲しいの?」


「うん」

そう言って王様は盾の力を遠慮なく引き出した所を教えてくれた。


ムラサキさん…、承認の必要なS級アーティファクト。

でもその硬度は何物にも負けない。


「ありがとう。最後にもう一つだけあるの。私のお願いを聞いて欲しいの。王様にしか頼めない事だから」

「何?」


「ガーデンの為なんだ。

でも誰にも知られちゃいけないの。

記す者にも。

だからこのまま待って。


…神如き力。

記す者にも誰にも見せない。

誰にも知らせない。

王様と私だけの秘密」


私の髪はものすごく光っているのだろう。寄り掛かっている壁が光っていると錯覚をしてしまう。


「逆流。

私が強制的に送りつけるイメージ。

【アーティファクト】」


「チトセ、これ…?」

「行った?」


「ああ、来たよ」

「ごめんね。王様にしか頼めないでしょ?」


「ああ、僕にしか出来ないね」

「手伝ってくれるかな?」


「いつでも言ってくれ。その時が来たらすぐに駆けつけるよ」

「ありがとう。悪魔の事とか盾の事とかありがとう。多分ツネノリが死んじゃうから私は手を出すね」


私はそう言って通信を止める。

視界の先でツネノリが圧倒していてクロウは一度も攻撃が与えられていない。


このままいけばツネノリが死ぬ。


「間に合わさなきゃ…

イメージ…「革命の剣」

イメージ…「紫水晶の盾」


王様みたいに全世界にってやれたら良いんだけどそれはまだ無理…」


まだ?

あれ?

私、やれるようになるつもりでいるや。


何枚行けるかな?

とりあえず2枚から


「【アーティファクト】」

よし、間に合った。


私の横には2枚の光の盾が浮いている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る