第157話 よくも俺の妹に傷をつけたな。

「まずはツネノリからお願い」

と千歳が言うので俺は風のアーティファクトを纏ってから斬りかかる。


悪魔化して巨体になったにも関わらず相変わらず俺の攻撃を紙一重でかわしていく。


俺の隙間を狙って千歳の剣が頭上と背後からクロウを斬りつける。

「硬っ!硬いよコイツ」

「だろうな。他の悪魔も大概だったぞ」


斬られたクロウは真っ黒な血を流しながら笑っている。


「女、お前も合格だ!お前とも楽しめる!」


そう言ってクロウは狙いを千歳に変えて襲いかかる。

その速度は想像より速い。


千歳は咄嗟に盾を張るが盾ごと吹き飛ばされてコロセウムに転がる。

俺は千歳に駆け寄って声をかける。


「千歳!」

「…無事…、でも身体中痛いからちょっと休みたい」


「わかった、今のうちに回復をしろ。

コイツは俺がなんとかする」

「ごめんね」


うつ伏せて起き上がれない千歳を見て俺は激しく怒る。


俺はどこかで千歳は怪我をしないと高をくくっていたのだろう。

光の腕輪を使いこなす才能、神如き力…


その甘えがこの状況に繋がった。


奴も許せないがそれ以上に自分自身が許せなかった。


「よくも俺の妹に傷をつけたな」

クロウの元に進んで行く。



「へぇ、アンタいい顔してるね。だけどさ、ちょっと待ちなよ」


「何?」

「あの女、まだ動けないだろ?邪魔だからコロセウムの端に置いてきなよ」


言葉の随所に腹立たしいモノを感じたが、確かに戦闘に巻き込む危険は避けたい。


「わかった」

そう言って俺は千歳を抱きかかえてコロセウムの端まで連れて行く。


「ツネノリ?」

「戦闘に巻き込みたくないだけだ」


「嫌な予感するから無理しないでね」

「神の勘か?」

「わからない。でも怖いから」


そう言って千歳は不安げな顔で俺を見上げてくる。


「わかった。十分気をつける」

そう言って俺は壁に千歳を寄りかからせる。



千歳には気をつけると言ったが、俺は奴が何かをする前に圧倒する気になっていた。



斬る、刺す、殴る

どれが効くのかわからない。

黒くなればどれも効かないのかも知れない。


だが知るか。

そんな事はもういい。


とにかくこの戦いを終わらせて千歳の傷を癒す。

俺は再びクロウの前に進んでいく。


圧倒してやる。

そのつまらない自信をへし折ってやる。


「【アーティファクト】!」

俺の右手には突剣、左手には棍棒。

そしてそのどちらにも風の力を纏わせる。


これで斬る、刺す、殴るはカバーした。

そして身体に風のアーティファクトと両腕に時のアーティファクトを使う。


「楽しもうぜ?」

そう言ってクロウが殴りかかってくる。

確かに並の速度ではない。


だがもう当たらない。

それを回避するとそのまま両手で一斉攻撃を加える。

どの攻撃なのかはわからないが確かに効果はある。


「ぐあっ」

クロウは思わず後ずさるが休ませない。

俺は手を止めずに手を止めずに斬りかかる。


硬い、命に届くイメージがない。

だがミッチリ叩けばそのうち終わる。

簡単な話だ。


いくら速いと言ってもそれはこの世界ではと言う奴だ。


ゼロガーデン、アーティファクトを使えば更にその先に行ける。


俺はことごとく攻撃をかわして反撃を与える。

だいぶ斬りつけたからだろう、体色が青味ががってきた。


「くそっ…、このままやられてたまるか」

クロウがそう言って俺を睨む。


いくら力が強くても当たらなければ関係ない。



「爆裂!!」

突然、クロウが爆裂の力を使った。

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