第156話 ジョマの説明通りなら目の前に居る悪魔が究極形…。

「どうする?」

「うーん…2対1ってズルくないかな?」


確かに千歳の言う事も一理ある。俺たちはアーティファクトが使えるだけに一方的になりかねない。

「なら俺が行く。

千歳は一先ず見ていてくれ」


そう言って前に出る。


「まずは男か…、生身で戦わせてもらう!」

そう言うとクロウは背中から長い剣を出して斬りかかってきた。


思いの外早かったので俺は盾を出して受け止める。


「硬いな…」


この男の攻撃はトセトで戦ったプレイヤー達とさして変わらない重さだったので問題なく防ぐ事が出来た。


「今度は俺からだ!」

俺は二刀流になって流れるように斬り込む。


だがどれだけ切りかかっても攻撃が当たらない。

なんだこれは?


だが不思議な事は他にもあった。

クロウの回避は同じ動きなのだ。


「おーっと!これは凄い!端末のベテランプレイヤーさんの面目躍如だ!」


ジョマの実況が気になるが攻撃を当てない事には話にならない。


「チャレンジャークロウ!端末機で数多の魔物を斬り伏せてきたベテランプレイヤーは何もかも規格外!紙一重でVRプレイヤーの猛攻をかわしています!!」


「ツネノリ!」

俺の横で千歳の声がする。

横を見ると千歳玉が浮いていた。


「コイツ、ジョマの説明通りならプロゲーマーとかそう言う奴なんだよ」

「なんだそれは?」


「あー…、端末で戦う事専門で物凄い実力って事。

だからかわし方も同じだし、攻撃もトセトで襲いかかってきたプレイヤーと変わらないんだよ」


端末プレイヤーは攻撃や回避の形が似るのか?

「それじゃあ、一定の動きを組み合わせているのか?」

「うん!」


よし、それなら…


俺は二刀を剣から突剣に切り替えて突く動きに変える。

クロウも中々の物で新しい動きにも対応してきて防御も併せて俺の攻撃を凌ぐ。

だが俺は魔物でも無ければ端末プレイヤーでもない。

突きの合間にアーティファクト砲を重ねる。



「ぐあっ?」

アーティファクト砲が直撃したクロウは見事に吹き飛んでコロセウムを転がる。


これ以外にも攻撃法は何個か考えていた。

手の内を全部出す前に倒せて良かった。


「ふぅ…」

「お疲れ様」


だがクロウはアーティファクト砲の直撃を食らっても立ち上がってきたのだ。


「これは!?「悪魔のタマゴ」の効果だ!

「悪魔のタマゴ」が付いたプレイヤーは生半可な事では倒せなくなります!!

だがこのまま戦うのであればあまりに卑怯。

運営としては注意をしなければならなくなります」


「回避能力と防御力…、だがこんな物で勝っても意味はない。

お前は強い。

これなら楽しめる」


そう言って胸に手を当てたクロウの身体が光ると目の前には漆黒の悪魔が居た。


「黒い!?」


俺たちが今まで見た悪魔の色とは全く違う。

俺が読んだ母さんの本にも黒い悪魔なんてものは居なかった。


そこにジョマの声が聞こえてきた。


「アハハハ、驚いたかしら?

私の使いがゼロガーデンで使った「悪魔のタマゴ」は別にアレが究極形じゃないのよ。

悪魔の体色はね、黒から濃紺、濃紺から青、青から緑、緑から黄色、黄色から橙色、そして赤になって灰色で終わるのよ。

あ、ゼロガーデンで見ているルル様達も驚いているから後で教えてあげてね」


ジョマの説明通りなら目の前に居る悪魔が究極形…これはまずいな。


「千歳!」

「うん、ツネノリ1人じゃ大変だから私も行くよ」


千歳は千歳玉をしまって腕からではなく千歳玉のような光の剣を2本出した。


「千歳、それ…」

「あ、ツネノリは初見だっけ?これは南の王様を真似た光の剣。

今の私には2本がいっぱいいっぱいなんだ」


そう言って笑う千歳。

…この剣も爆発したりするんだろうか?

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