第135話 嘘、気持ち悪い。それだけじゃないよね東さん?

ん?

ここは何処だろう?

起きた私は何処か知らない場所にいた。

でもこの匂いは知っている。


お父さんとツネノリの匂いだ。


「んー?ここってもしかして?」

私はベッドのある部屋の扉を開けて廊下を歩く。

廊下には他にも扉があったが何となく「コレジャナイ」気がして先に進む。

廊下の先にはリビング?のような部屋があるのだが作りがやはり日本ではない。

でもセカンドガーデンで見た建物とも違う。


リビングに行くと、紫色の髪をした女の人と金髪のお父さん。そして何故かジョマと東さんまで居る。


「何この空間…」

あまりの状況に言葉が出てしまう。


「おぉ、起きたか千歳!私は次元球で顔を見ていたがお前は初だな。

私はルル。お前の母だ!」

「…え?…ルルお母さん?」

やはりそうだったか、この紫色の髪はツネノリと同じだ。


「何だ?覚えてないのか?」

金色のお父さんが言う。


「え?何?」と私は思ったままを聞く。


「千歳様が私…北海道子の所に飛び込んできたのよ?」

ジョマがヤレヤレと言う顔で言う。


「その顔は完璧に忘れているね」

と東さんが笑う。


「え?え?え?」


「お前…本気で覚えてないのか?」

「うん…、どうなってるの?」


「今日は9月最初の日曜日だ。それは良いか?」

「え?あれ?イベントは?」


「何言ってんだ?イベントは中止になっただろ?」

「…中止…?」


「そうだ、巨大ボスに悪魔化などなどやり過ぎてクレームが多発して中止になったのだ」


「そして千歳様は中止が決まった日に私の正体を教えてくれる話になったけど今はこのままの関係でいましょうって話になったのよ。

それは良い?」


「え?そうなのかな?言われてみるとそんな記憶もあるんだけどなぁ…」

…でも何か自分が体験したってより言い聞かされた感じ。

授業を受けて知っただけの情報って感じがする。


「次のイベントは年末だから、その時に改めて勝負をしましょうって話になったでしょ?」

ジョマが笑いながらそう言ってくる。


うん、確かに私はイベントが台無しになってもジョマには本当のことを言おうとするし、ジョマも性格的にそれを良しとはしない。


何もおかしな点はない。

でも何かがひっかかる。


「千歳は昨日の事は本当に覚えていないのかい?」

「うん、どうしちゃったんだろ?」


「うーん、初めてゼロガーデンに連れてきちゃったから混乱したのかな?」

「やっぱりここはゼロガーデンなんだ!え?でも何で?混乱?」


「何でって千歳様が道子の所にやってきて家出するって言いだしたのよ?」

「家出?それこそ何で?」


「あー、これは重症だのう、千歳とりあえずこっちに来て座れ。茶を飲んで落ち着くがいい」


「うん、ルルお母さん」

私は言われた通りに着席してお茶を飲む。

何か、物凄いメンバーで驚いてしまう。


「まず一つずつ片付けて千歳に思い出してもらおうかの?千歳?ここがゼロガーデンだとするとおかしな点は何だ?」

そう言われて私はすぐにおかしな点に気付く。


「ツネノリが居ない」

「そうだ。ツネノリが不在だ。何処に行ったか覚えておるか?」

私は覚えていないので首を振る。


「日本だ」

「え??日本に行っているの?」


「千歳…お前が日本を案内したいとツネノリを呼んだんだぞ…」

お父さんがガッカリした顔でそう言う。


「それで今回のイベントの報酬と言うか詫びとしてジョマがツネノリを二日間だけ日本に行けるように手を貸してくれたのだ」

「僕は反対したんだけど、ジョマが千歳に頼まれたって言うんだ」

確かに、私なら頼む気がする。


「でも何で?そうしたら何で私がここに居るの?」


「…お前…、昨日の事を俺はまだ知らないが、東に聞いたぞ?」


「千歳、順を追ってあげるよ。まず君はツネノリを迎えに開発室に常継と来たんだ。それはいいかい?」

「覚えていないけど多分そうすると思う」


「そして帰り道に学校のクラスメイトに会ってしまう。そこでツネノリを見られてクラスメイトが色めきだって千歳の機嫌が悪くなる」

「クラスメイト…、誰だろ?まあ誰と会っても面白くないし、ツネノリは格好いいからそれを見てキャーキャー言われれば機嫌が悪くなると思う」


「お前…学校大丈夫なのか?」

「もう!大丈夫だよ!!」


「そして帰宅した3人を待ち受けていた千明はご馳走を作って待っていた」

「ああ、段々と思い出してきたかも。お母さんは前日からお米を何キロも買ってモチ米も買ってた…」


「そう、そして出てきたご飯を見て愕然とするんだ…」

「栗おこわ、炊き込みご飯、まぜご飯、カレーに麻婆丼、ありとあらゆるご飯ものがこれでもかって出てた…」


「デザートは?」

「おはぎだったよね?」


「それに怒った千歳は常継に文句を言うんだが常継は?」

「私を軽く無視してツネノリに「これも米から作る酒なんだ、飲んでみろ」と日本酒を勧めていた」


「…千明様は?」

「ジョマ?お母さんはね?ああ見えてお酒好きなんだよ?私を無視して楽しそうにツネノリとお酒を飲んでいたわ!!

「夢だったのよツネノリ」って言っちゃってさ!!」


ああ、段々と思い出してきた。

腹立たしい。


そりゃあ初めての日本で歓迎したいのはわかる。

でもだからって、米、米、米で観光も無し!

そしてクラスの女子に見られたツネノリ。

絶対に週明けが面倒くさい!!


「それで千歳様は家を飛び出して私の元に家出に来たのよ?覚えてる?」

「うん「私をルルお母さんと金色のお父さんの所に連れて行って!!」って言った」


「それで私は東に頼んで千歳様を連れてゼロガーデンに来たのよ」

「そしたら生身だったからか気絶しちゃって、今まで寝ていたんだよ」


「まったく、いきなり神様から連絡を受けて千歳を家出させると言われた時には驚いたぞ?」

「ごめんなさい」


「いや、謝らんでいい。私もこうして千歳に会えたのだ。それに予定が一週間早まっただけだしな」

「え?」


「何だ?それも覚えていないのか?今週がツネノリで来週が千歳だろ?しかも来週は、俺は俺のままで千歳に会うことになっていたんだぞ?」


「そう…なんだ」

何か記憶違いのような、でも確かに記憶はある。


「それで?どう千歳様?生のルル様とツネジロウ様は?」

「どう?って…、ルルお母さんは想像通りの綺麗な人だよ。何でお母さんといいルルお母さんといい…お父さんを選んだんだろう?」


「お前…酷くないか?」

「金色のお父さんもツネノリが言っていた通り、お父さん何だけどどこか違う感じのお父さんで、一目で雰囲気の違いが分かったよ」


「まあ、今日はゆっくりしていけ。千明のように準備する時間が無かったからのぉ、たいしたもてなしは出来ないが、そこはそれで勘弁してくれ」

「うん、ありがとうルルお母さん」

私は目の前の人達が偽物ではない本物だと言う事は直感で分かるので変な気持ち悪さもなく安心して微笑んでしまう。


「お、ようやく笑ったな」

「お父さん?」


「お前、起きてから…違うな。東とジョマに連れられてからずっと不機嫌な顔をしていたんだぞ?」

「そっか…、何でだろ?ツネノリのことくらいでそんなに怒らないと思うんだけどなぁ…」

確かにさっきまで物凄く苛立っていた気がする…なんだっけ?


「ところで千歳?一つ聞きたいのだがいいか?」

急にルルお母さんが真剣な顔で私に詰め寄る。


「あ、ルルはあれだね」

「ああ、あれだな」

「ふふふ、好きですものね」


「お前達、ちょっと黙っておれ!!」

何だろう?急にどうしたんだろう?


「千歳?おはぎって美味しいのか?」


「え?」


「千歳、ルルはな甘いものに目が無い」

「ああ、ルルお母さんって甘党なんだ。ルルお母さんってあんこを食べた事ある?」


「ああ、あんまんだろう?饅頭だろ?」

「うん、そのあんこがご飯の周りにくっ付いているんだよ」


「何か妙な感じだのぉ…」

「えぇ、美味しいんだよ?ゼロガーデンにはないの?」


「千歳、そう言う食べ物はセカンドに行って取ってこないと無いんだよ。だからここではお米も無いんだ」

「あ、そう言えばツネノリもそんな事を言っていたね」


「じゃあ、お父さん取ってきてあげなよ?」

「俺か?…うーん…、行ってやりたいのはやまやまなのだが…俺はファーストにもセカンドにも行ってはいけないことになっているんだ」


「え?そうなの?何で?」

「ツネジロウとツネツギの関係はツネノリから聞いたかい?」


「うん、少しは…、金色のお父さんはお父さんが日本に行っている間にルルお母さんと居るお父さんで、お父さんは日本からゼロガーデンに来た時に情報を全部貰うって」


「ああ、だからあまりゼロガーデンを離れて色んな情報を手に入れたり怪我をすると、ツネツギが入ったその瞬間に全部の情報が襲い掛かってきてしまうんだ」


「それで行けないの?」

「ああ、東はそう言っているな」



…気持ち悪い。



「嘘、気持ち悪い。それだけじゃないよね東さん?」

私は思ったままを口にしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る