第125話 ジョマ、ありがとう。

2年 伊加利 千歳

私がインタビューをしたのは父と母の職場にいる「北海 道子」さん。

道子さんは企画部で働く女性で父のいる開発部でも活躍できるスキルがあると言うがそれでも企画の仕事が好きで企画一筋で行きたいと言っていた。

その道子さんにも嫌な事はあると言う。

企画がうまくいかずに企画倒れや、企画をする為の世界が台無しになった時だと言っていた。


そんなプロフェッショナルの考えを聞いて私は自分の将来が少し心配になったが道子さんは優しく私でも大丈夫と励ましてくれた。


道子さんのプロフェッショナルな意識、仕事への姿勢は素晴らしくて妥協を許さない。

周りから悪く思われようが可能性とポリシーを大切にして最大限の努力を惜しまず、また周りにもソレを求めていた。

ただ、やはり道子さんも傷付いていたと思うので仕事をする上で理解者は必要だと思った。


私はまだ将来の夢は見つかっていない。

だが、その夢が見つかった時には道子さんのようにプロフェッショナルに意識高く進んでいきたいと思いました。



これが私の書いた宿題。

そして恥ずかしかったが皆の前で読み上げた。


読み上げた時、ジョマは号泣して私に抱きついて「ありがとうございます」「千歳様に会えて良かった」と言ってくれた。


「私こそ道子さんに会えて良かったよ」


「本当ですか?

千歳様はこんな私なんかに会えて良かったんですか?」


「もう、こんなでもなんかでもないよ。

私は道子さんに会えて良かった。

これからもよろしくね」


「はい!!」


そこで世界が暗転する。

目の前は真っ暗でまた夢の中に戻される。


周りにいたお父さんとお母さんも目を瞑っていて、東さんもジョマも目を瞑っている。


「見事だ千歳」

目の前に地球の神様が現れた。


「多分、私はジョマの本質に触れた気がする」


「では言うのだ。彼女は創造神ではなくなんの神だ?」


「ニュアンスが合っていればいいかな?」

「構わない」


「ジョマは――の神様。さもなければ――かな?」

「どちらも同義だ。そして正解だ千歳よ」


私は正解にたどり着いた。


「そして傷を癒すのは世界を滅ぼすたびにジョマ自身が傷付いたから」

「そうだ」


「私の願いを言っていい?」

「ああ」



……

………


「大胆な事を考える」

「無理かな?」


「無理な事はない。

だがガーデンの神が何処まで受け入れるかが問題だな」


「私は東さんも救う」


……

………


「また凄い事を考えるな」

「そうかな?その代わり神様には最大限手伝って貰いたいの」


「それもまた構わない。あとは談判をしてきた神達が納得するかだ」

「そんなの必要ない。私が納得をさせるの。東さんもジョマもそう言うもので傷付いたんだから」


「ではまた呼ぼう。

いつにする?」


「ジョマが全ての力を使った後」

「それはかなり大変だ」


「私はやり切るよ」

「ではその日を待とう。その時には代表で談判をしてきた神達に会わせよう」


そう言って地球の神様が消えたが私は暗い場所から戻らない。


え?

なんで?


東さんが寝ていて戻せないとか?



私が周りを見渡すとお父さんとお母さんは居なくなっていた。

東さんの姿もない。


居るのはジョマだけだ。


ジョマはそっと目を開ける。


「千歳様、こんな所でどうしたの?」

「ちょっとね」


「地球の神様にお呼ばれ?」

「うん」


「私のちょっかいを怒ってもらって日本に帰れるようにかしら?」

「違うよ。私がジョマのことを知りたいって思っていたから選ばれたの」


「そう。私なんかの事を知りたいなんて本当に千歳様って変わっているわ」

「そうかな?」


「そうよ」

一通り話すとジョマが笑う。


「夢を見たわ。なんの夢かは思い出せないけど千歳様と一緒にいた。

私はとにかく嬉しくて千歳様に抱きつくのよ」


「それは…」


「夢じゃないわね。地球の神様の差し金かしら?」


「うん、私はそこでジョマの事を知ったよ。

ジョマ自身が知らないジョマの事。

ジョマが創造神ではない別の神様と言う事を知ったの」


「え?」


「ジョマは自分の事を創造神だと思っているんだよね?」

「ええ、そうよ。

自身の存在を認識した時に側にいた神が私の力を見て創造神だと教えてくれたから」


「それが、その神様が間違えたんだよ。ジョマは創造神じゃないの」


「そんな…?でも私には創造の力が…」

「うん、ジョマはすごい神様だから創造の力もあるけど、それは創造神の力じゃないの」


「創造の力も?」

「うん、ねえジョマ?」


「え?」

「私と勝負して」


「勝負?私と千歳様が?」

「ううん、私達とジョマかな。ジョマはすごい神様だから私1人じゃ話にならないよ」


「そんな、私なんか…」

「あ!またなんかって言った!それ気持ち悪いよ!」

私はそう言いながらジョマを抱きしめる。


「千歳様?」

「私はジョマを尊敬しているの。だから私なんかって言わないで。悲しくなっちゃうよ」


「尊敬…」

ジョマは泣いてしまう。

その泣き顔は北海道子と一緒だ。


「だから勝負ね。

イベントの残りをお互い全力を尽くして戦うの。

ジョマはこれまで通り改革派で私は保守派。

それで全力を尽くし合ったらジョマが何の神様か説明するね。

もし仮に私が死ぬ事になっても死ぬ前に神様達に少し時間を貰ってジョマに説明するね」


「千歳様、死ぬなんて…」

「ジョマ、今悩んでいるよね?自分のルールを無視してでもって悩んでいる。

東さんからサードガーデンさえ貰えたらイベントの手を緩めて私とツネノリが生き残れるようにする事を考えていたでしょう?」


「……」

「黙ってもダメ。私はジョマが好きだからわかるんだからね」


「本当に敵わないなぁ…」

ジョマがさらに泣く。


「ふふ、勇者の娘だもんね」


「千歳様は全力の私と戦いたいのね?」

「うん、ジョマの本気でやるイベントと私は戦うの」


「本当お見通しね。最終のレイドバトルはまだ決めかねていたの。その前はもう仕込みが終わっているから変更しないけど最終戦はかなりキツいの行っちゃうわ」


「楽しみにしてる」

「死んじゃうかも知れないのよ?」


「大丈夫、ジョマのイベントに合わせて強くなる。

ジョマは出来ない事は言わないもの。

頑張れば出来る事しか言わないから私は頑張る」

私はジョマに向かって笑顔を向ける。


「本当、敵わない…、じゃあ私からも千歳様にエールを送るわ。

起きたらルル様に連絡を取って南の王様を出してもらいなさい。

彼の持つ「革命の剣」と言うアーティファクトの特殊能力、12本の光の剣について教えてもらいなさい」


「光の剣?私やお父さん達みたいな?」

「違うわ、あの剣は空を飛ぶ。本人の力次第で世界中を高速で飛ぶのよ。問題点は酷いけど千歳様がそれを聞いて閃く事が出来たら明日からのイベントは楽しいものになるわ」


「ありがとう!」

そう言ってジョマを抱きしめる腕に力を入れる。


「照れるわね」

「でもいいの。ジョマを好きだからいいの」


「好き?」

「うん、ジョマ…好きだよ」

またジョマが泣く。


「私は魔女って呼ばれたりしていたのに?」

「それはジョマの本質が見えていない人達の勘違いとジョマが素直になれなかったからだよ。

私は本質に会えたからわかるし嘘じゃない。

ジョマが好き。

あ、恋愛じゃないからね!」


「ふふふ、嬉しいです」

「ジョマ、ありがとう」


「はい?」

「ジョマのおかげで普通じゃない体験もできた、ツネノリにも会えた。ルルお母さんとも話せた。それは確かに16歳…高校生になれたらお父さんから聞けて会えたかも知れない。

でもジョマのおかげで14歳の今会えた」


「…」

「トセトでもありがとう。立ち直るチャンスをくれてありがとう。タツキアではメリシアさんとツネノリを引き合わせてくれてありがとう。

センターシティでは「創世の光」の溜め時間に

付き合ってくれてありがとう。

嬉しかった」


「千歳様!!」

ジョマが私を抱きしめて泣く。


「ジョマ?私はジョマのイベントで足を引っ張ってなかったかな?」

「千歳様は最高の人です!トセトから先は居なくてはならない人です!」


「ありがとうジョマ」

「こちらこそありがとうございます千歳様」


一頻り泣いたジョマが落ち着いてから私は離れる。

「泣いたらスッキリしました。私、泣いたの初めてです」

「うん、それもジョマの問題点だもんね。もっと泣いていいんだからね」


「千明様にも言われました」

「お母さんめ…、私が先だと思ったのに」


「ふふふ、でも涙を見せたのは千歳様が最初です。

あ、恥ずかしいので東や皆さんには…」

「誰にも言わないよ」


「ありがとうございます」

「それじゃあそろそろ帰りたいんだけど…帰り方わからなくて…」


「私が送って差し上げます」

「ありがとう!またね!!」


「はい。ちゃんと王様から聞いてくださいね」


その声で私は目が覚めた。

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