第120話 なんか違和感が増してきた気がする。

「千歳!千歳!?」

千歳の元に辿り着いたが千歳が倒れている。


「父さん!母さん!千歳が倒れているよ!」

「いや、眠っているそうだ。起こすんだ!」


「え?眠っ…?えっ?」

「流石私の娘、豪胆な奴だ。それに高威力の砲台を作るために眠って力を回復させているらしい」

回復と言われれば正しく聞こえるのだが、寝ていると聞くとなんか釈然としない。


俺は千歳を抱き起こすといつものように起こす。


「んー?おはよ。ツネノリ」

「…おはよう千歳。やれるか?」


「さっきは明日の事とか考え過ぎていてセーブし過ぎていた。

明日起きれなくてもやるしかないから…、私が起きなかったら明日はツネノリが頑張ってね」


「お前、またそんな危険な事を…」

俺はそう言いながら千歳に手を出す。


「ツネノリ?」

「俺の力も使えばいい。そうすれば倒れないだろ?」


「千歳!そろそろ始めないと間に合わなくなる!ツネノリを使わせてもらえ!」

母さんの声が聞こえた後で母さんがノレノレ母さんになって再度「創世の光」の準備に入る。


「んー…、じゃあ、ツネノリは発射直前まで休憩。

発射時に強度アップするからね。【アーティファクト】!

ノレノレお母さん、開始して!」

「あいよー【アーティファクト】」


千歳は次元球を用意した砲台の奥に入れて溢れ出てくる圧に耐えている。

「千歳、支えるぞ!」

「嬉しいけど休みなよ、ずっと走りっぱなしの戦いっぱなしだったでしょ?ツネノリがダウンしちゃうよ」

そう言って千歳は頑として手伝いを認めない。


「ツネノリー、…母ちゃん…頑張るからねー!」

「うん、ノレノレ母さん。信じてるよ」


「うわっ、…母ちゃん…お願い…出来ちゃったよ」


ノレノレ母さんが辛そうにしながら話をする。


「どうした…ノレノレ?」

次元球の向こうで父さんが辛そうな声で心配そうに話す。


「えー…、簡単…なんだけどさ…、ツネジロウ…とツネノリと…千歳から…応援されたいなー」


「ノレノレ?」

「ノレノレ母さん?」

俺と父さんは呆れてしまい聞き直してしまう。

だが…


「それ!…いいね!…やろう…よ…。

ほら…お父さん…からだよ…」

千歳だけはノレノレ母さんの案を受け入れて賛成している。


「んー…、頑張れ…ノレノレ。お前なら出来る」

「ノレノレ母さん、頑張って!」

「ノレノレ…お母さん……、苦…しい…けど…頑張ろうね!」


「ムッハー!!やる気出る!コレなら5分は早まるかも!!」

ノレノレ母さんが嬉しそうに喜んで聞いていた父さんがマジかよと言っている。


そのまま20分が過ぎる。

「そろそろ…だよね?ノレノレお母さん?」

「うん…、ツネノリ……千歳を…支えて」


「わかったよ。

千歳、お前の肩に手を置く。

俺の力も使うんだ」


「ありがと、…強度アップ。イメージはお父さんの盾【アーティファクト】」

そう唱えると砲台は硬さを増したのだろう光が強くなる。


「これ、1人だと長時間張れない。

ツネノリの力も貰う…」


そう言った後、俺は自分が盾を張った時のような疲労感を感じる。


「まだお兄様は倒れないわ。もう少し貰いなさい。今のままだと千歳様はまた1日以上寝てしまう」

そう言って目の前に魔女が現れる。


「ジョマ…、来てくれたんだ」

「さっきは残念だったわね千歳様。

今度の砲台の硬さは申し分なさそうよ。

でも一人で力を使い過ぎ。

もう少しお兄様を頼りなさい」


「うん、教えてくれてありがとう」

「いいのよ。私はこの世界が盛り上がって綺麗に輝けばそれでいいの」


…世界を壊すのが目的では無いのか?

なんか違和感が増してきた気がする。


「お兄様、さっきの赤メノウは素敵だったわね」

「赤メノウ?」

「千歳様は眠られていたからわからないわよね。

あのギガンスッポン、首まわりとかズタズタでしょ?

援軍が一瞬だけ来たのよ。

それで足止めが何とかなったしお兄様もここに居られるのよ。

ふふ、私が嫌がらない私好みの援軍。

ああ言うのが大事なのよね」


「お前は赤メノウが誰だか知っているのか?」

「ええ、でも言わないわ。それがルールってものでしょ?

さあ、千歳様。

そろそろ臨界よ。

今度は外さないでね」


そう言って魔女は消える。

ノレノレ母さんと赤メノウの活躍があったからかまだギガンスッポンまでは距離がある。


確かに間近になったギガンスッポンは首を中心に傷だらけだ。


「千歳ー、準備いい?行くよー」

「うん、お願い。ノレノレお母さん!」


「行け!ノレノレっ!」

「【アーティファクト】!!」


次の瞬間、砲台から光が出る。

ギガンスッポンは光の当たる所から消滅していく。


「ツネノリ!千歳を支えろ!

千歳、今度は壊れない。だから安心して奴を倒せ!」


「うん!!」

千歳は二度目だからか器用に砲台を動かしてギガンスッポンに光を当てる。


「真っ二つ!!」

そう言うと千歳は光を上から下に落としてギガンスッポンを斬り裂いてしまった。


「母さん!千歳は倒した!!」

「了解ー、じゃあこっちも疲れたからこのまま終わらせるね。

ツネノリ、千歳。またねー」

そう言って次元球が静かになる。


「千歳、やったな」

だが千歳から返事はない。

それどころか倒れ込んでしまった。


「千歳!!どうした!?」


「あらら…、本当にお兄様の力は最低限しか貰わなかったのね千歳様は…」

目の前に魔女が現れて千歳の頭を撫でる。


「大丈夫よお兄様。

この位なら明日の朝には目覚めるわ。

イベントは私が終わらせておくから貴方達は先にホテルに帰りなさい。

東、私が2人を送るから後は貴方がやりなさい!」

そう言うと足元が光って昨日泊まったホテルの部屋に帰された。

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