ツネノリ、ルルの章・ギガンスッポン撃破。

第119話 あと一手、一手が足りない。

「後は任せる!」

俺はそう近くにいたプレイヤーに伝えてその場を後にする。

よりによってギガンスッポンから一番離れた場所に居たのが良くない。

センターシティは大きな建物もあるのでここから全貌を伺う事は難しい。

移動をしないとどのくらい近づいてきているかわからないのが困る。


とりあえず千歳の元に向かう為に俺は前に進む。

途中のポイントはギガントダイルに押されていて無視する訳にはいかなかった。


「クソッ…」

このままだと千歳の言っていた三箇所から600人ずつギガンスッポンに向かわせるのは不可能だ。

200人と俺に千歳で何とかするしかない。


「ツネノリ!」

「母さん?」


「今どこにいる?千歳の元へ急げ!」

「わかっているよ!ただ、今ここで俺が動くとこの場所がギガントダイルに突破されるんだ!」


「くそっ…何匹倒せばそこは落ち着く!?」

「8…いや7で後は引き継ぐよ」


「急いでくれ!」

「うん!」


身体はまだ動く、倒れる気配も無い…

だがどうにもこの状況が厳しい。

あと一手、一手が足りない。


ここに父さんが居たら先に千歳の元に行ってもらう事もギガンスッポンを相手にすることも出来る。

俺の代わりにギガントダイルの相手をしてもらう事も可能だ。


そんな事を思っていると母さんが通信を切り損ねた次元球から父さんの声が聞こえて来る。


「俺が行く!」

「ダメだツネジロウ…、お前は戦ってはダメだと言われているだろう!」


「だが子供が、俺達の子供が苦戦しているんだぞ!?東!!俺を行かせろ!!」

多分東さんが近くにいるのだろう。

父さんが声を荒げて東さんに談判をしてくれている。


父さん…、前に聞いた事がある。

ツネジロウの経験は父さんになった時、一瞬で父さんの中を駆け巡る。

だから戦闘等の怪我をする事態は避けなければならない。

もし怪我をすればその間の痛みが一気に父さんに襲いかかると聞いた。


その事はツネジロウ…父さんも知っている。

知っていてもここに来たいと言ってくれている。


「それなら僕が…」

「ダメだ!」


まだ次元球からは知らない人の声がする。

「ルルがやらないなら僕がやる!「万能の鎧」の一つを次元球に変える。【アーティファクト】」


なんだ何が聞こえる?

その間にもギガントダイルは増えていてとてもじゃ無いが千歳の元に迎えない。


「くそっ!千歳!!」


「…聞こえる?ギガンスッポンの足止めいい感じだね。

まだ動ける?

そう…

ツネノリがピンチだ。

今動けるのは君しかいない」


なんだ?

誰に話している?


「キヨロス!3分はとうに過ぎておる!呼び戻せ!!」


母さんの怒号が聞こえてくる。


「ルル?今はやるしかないんだ。

神様がツネジロウを断って、ルルが僕を断ったんだ。仕方ないだろ?」

次元球からは厳しい言い方だがけっして冷たくない声が聞こえて来る。


「君はツネノリがチトセの元に来られるようにする。

そして出来るならセンターシティ周辺のギガントダイルを一掃するんだ。

君はツネノリの赤メノウなんだろ?

やれるよね?」


赤メノウ?

何の話だ?

俺の首にはメリシアがくれた赤メノウがあるがそれと関係しているのか?


「ツネノリ!距離を取るんだ!デカい攻撃が来るぞ!」

父さんの声で危険を知らせる声が聞こえた。



その直後、ギガントダイルの群れに向かって俺のアーティファクト砲の3倍くらい大きな球が飛んで来た。


球が直撃したギガントダイルは硬い外皮を無視して破壊されているもの、身体が焼けただれていたものもいた。


「今だツネノリ!千歳の元へ行け!」

「わかったよ父さん!」


俺はそのまま千歳の元に向かう。

途中、通信の声通りならアーティファクト砲を撃った者とすれ違うかと思ったが誰ともすれ違わなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る