第100話 新しいアーティファクトを作るときはコレが一番悩むのだ。

神から連絡を受けた私はツネノリの事が堪らなく心配になった。

好きになった娘が魔女の手で死んでしまったのだ…私はサードの為に考えていた計画を前倒してこのふざけた状況をひっくり返す事を誓う。


まずは神を呼ぶ。

「やあ、ルル…」

「ご足労ありがとうございます」


「僕の方も君にお願いがあるからね」

「私もお願いがあります」


「「死者の蘇生」」


だが、そこには問題もある事を私は知っている。

神がその力を示すとあの魔女は黙っていない。

最悪全てのガーデンが滅ぼされる。


だから私は考えたのだ。


「僕たちの願いは同じだ」

「ええ、そして置かれている状況も同じです」


「ルルが僕を呼んだのは何故だい?」

「人の限界を超えた部分だけはあなたの力が必要だからです」


「それはなんだい?

場合によっては何も出来ないが…」


「一つ、あなたの名の下にゼロガーデンの力を最大限使わせてください」

「二つ、今の私では立ち入りが出来ない死者の間へ行かせてください」

「三つ、上手くいけば以降の死者の間での作業をお願いしたいです」


「それは構わない。死者の間の作業に関しても千歳が言質を取っている。

おそらく彼女の妨害はないだろう。

君は何をするつもりだい?」

「まずは0と1の間を使わせてください。

後は何かと有料なのでそこら辺のこともよろしくお願いします」


「それは構わない」

「ありがとうございます。

それではすぐに行動に移します。

後はツネツギが戻って意見を貰ってから始めます」


「ルル、この計画に名を付けるなら?」

「「奇跡の少女」そう書いてマリオンと読みます」


「いい名前だね」

「はい」


「それに既に成功例まである。ルルの得意分野だ」

「任せてください。それにしても千歳は凄い」


「ああ、全ての事で彼女から譲歩を獲得している。

そして彼女の中にある闇に気づき始めている」


「我々の切り札ですね」

私はそう言うと通信球を持ち出した。


「聞こえるか?私だ、ルルだ。今またこの世界の危機でな、力を借りたい」

「危機?私の所も子沢山で家計の危機だよ。

ご飯は作っても作っても足りないし」

通信の相手は不満ありげな言い方をするがとても楽しそうに話す。


「だと思ったよ。でだ、良い話を持ってきた。成功報酬だが神様が十分な報酬を約束してくれている」

「本当!?やる!」


「だが本当に用があるのはお前ではないのだ、お前の子供達、2番目と3番目がその職に就くと言っておっただろう?」


「え?カリンとマリカ?それって…」

「ああ、追って連絡をする。私は人集めに忙しいのだ」

そう言って通信を終わらせる。

次だ…


「私です。ルルです。先日はご意見助かりました。

無事に次元球も機能してくれました。

実際に使うのはコレからですが、はい。

今度は別件でお願いが…」


「あ、ちょっと待ってね、別の通信球がうるさいな…何?」

「お爺ちゃん!出番だよ!!準備して!」


「何?どうしたのさマリオン?今僕はルルさんと話をしていて…」

「そのルルのお願いだよ!神様からの仕事だって成功報酬だけどお金貰えるって!!」


「ちょっとルルさん、なにそれ?もう…直ぐに言ってくれればいいのに。

やるやる!僕やるよ」

「はは…、ありがたい。さすがはマリオンとペック殿は話が早くて助かる。

マリオン、変則的な通信になるが聞こえるか?」

「なに?」


「カリンとマリカでペック殿に行き着いたのはありがたい。マリオンから甥っ子に連絡を頼めるか?」

「もうしたよ」


「何!?」

「この話で人手が居るならお爺ちゃんとカリンとマリカ、それとリークは外せないと思ったから」


「ふぅ…、話が早くて助かるな。ひとまずは追って連絡するまで何もせずに待機していろよ」

「了解ー」

ついつい懐かしさがこみ上げてくる。

共に戦ったメンバーとその家族、嫌でも20年前の若かりし頃の熱いものが胸にこみ上げてくる。


「順調そうだね」

神は私を見て微笑む。

「そうですね。問題になるとしたらコレから先ですかね」


「そうかい?彼は気持ち良く協力してくれると思うけど?」

「いや、マリオンの言葉を借りるなら「アイツは非常識だから自分がセカンドに行って全部を片付ける」って言いそうなのが…」


「ははは、確かに彼ならやりそうだしやれそうだ。ルルが次元球を作ったんだ、言い換えよう。彼ならやるだろうね」

「そっちの説得が大変そうで…」


「大丈夫、ありのままを話してご覧。

多分彼はツネノリの話を聞いたら気持ちよく裏方に回ってくれるよ」

「そうですか?」


私は深呼吸をすると再度通信球を手に取る。

「聞こえるか?私だ、ルルだ。今良いか?」

「ルル?どうしたの?」


「今また世界の危機でな、少し力を借りたい」

「危機?何があったの?言って…、僕が全てを倒すから」

通信先の声が怖いものに変わる。

マズい、ツネツギの言葉で言うなら「キレる」と言う奴だ。


「いや、そうじゃない!落ち着け!!順を追って説明するから!!」

そして私はツネノリと千歳がセカンドに召喚されてからの事を事細かに説明した。


「あの女…、またか」

「いや、どうにもツネツギや神、千歳の話を聞く限り使いの方とは全く違う存在なのだ、前のように倒して終わりと言う簡単な話ではない」


「ふーん…。

じゃあそっちはみんなに任せるよ。

でも仲間が危なくなったら僕は世界が違かろうが何が何でも手を出すからね」

「わかった…」


「それで、僕の仕事は?」

「運搬と無限時間の提供かの」


「わかった、いつやるの?」

「ツネツギがセカンドから戻ってきたら相談をする。それからだ」


「わかった。それにしてもツネノリが恋をして相手の為に力を使う…、すごく良いね。

僕は全面的に応援するよ」

そう言って通信が終わる。


「はぁぁぁ…、疲れた」

次元球のテストより疲れる。


奴は授かったアーティファクトのせいで怒りっぽくなったと3人の妻や周りの証言で聞いては居るがそんな事はどうでもいい。

今言えるのはとにかく怖いという事だ。

私は前にあの男が怒ってあの女の使い、魔女を2人同時に圧倒して細切れにしたのを見ている。


誰かが魔王と形容していたのがピッタリだと思えてならない。


出来るならノレル達に任せたいのだが前にノレルやノレノレからは言われたのだが「えー、あの子何べん説明しても私のことをルルって呼ぶからヤダ」「見た目や話し方まで変わるのにノレノレとルルの違いもわからないんだよ」と拒否していた。

多分、わからないのではなくて一緒くたに見ているのだろう。


「お疲れ様」

「とりあえず準備はできました。

後は私の準備になります」


「どうするんだい?」

「「意志の針」を転用したアーティファクトを作ります」


「成る程、それで死者の間か…、後はマリオンのブローチかな?」

「はい。あれはペック殿から「記憶の証」と言う擬似アーティファクトだと聞きました。

「記憶の証」と「意志の針」を基に器になる人工アーティファクトを作ります」


「そしてアーティファクト「命のヤスリ」を持つ者を集めるわけだね」

「はい」


「ルル、それでは僕からのお願いだ。

多分、彼女が今回のプロトタイプ…試作になる。それを必ず成功させて欲しい。

そうしたら次は正式に僕からもお願いをしよう」

「サードに向けてですね」


「ああ、これで死者の間の限界値をなんとか出来る。上手くいけばそれ以上の…」

「神様?」


「いや、それは高望みし過ぎかな?

とにかくよろしく頼むよ」

そう言うと神は姿を消す。

私はツネツギが戻るまで人工アーティファクトを作ることにする。


「名前、何にしようかのぉ…、新しいアーティファクトを作るときはコレが一番悩むのだ」

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