第101話 もしもの時の問題も千歳が居てくれれば解決する!!

「ルル、進捗はどうだい?」

そう言って神が私の前に現れた。


「はい、まずまずです。実際に魂を入れていないのでキチンと機能するかの心配はありますが、こればかりは死者の間に迎えに行かないと…」

そう言って針の付いたブローチを神に渡す。


「うん、悪くない。多分彼女に使うには問題無いよ。

ただ中には高齢者も居る。

高齢者だと容量不足になると思う。

もう少し大型化した方がいい」


「ありがとうございます。

それでどうされたのですか?」


「うん、動きがあったから話にね。

伊加利家の女は本当強いね」

「は?」


「千明が、生身でセカンドに行ったよ」

「何ですと?生身?何故そんな危険を!」


「ツネノリの為だよ、母として息子の為に全力を注ぐそうだ。

北海…、あの女にも生身で行くから許せと談判していたよ」


「千明…」

私は嬉しい反面ちょっとだけ面白くなかった。

ツネノリは私の子で、私も出来るなら飛んで行きたい。

飛んで行って抱きしめて一緒に泣いてやりたい。


「ルル、ヤキモチが顔に出ているよ」

「私は別に!」

神は私を見て笑う。


「ルル、次元球を出して。ツネノリを見よう」

そう言って出した次元球の中でツネノリが自暴自棄になっていた。

千明が説得をしている。


私はだんだんとイライラしてきてつい口を挟む。

そして最初は内緒にしておこうと思った事を口にする。


「私達の誰もメリシアを諦めていない。諦めているのはツネノリ、お前だけかもしれないぞ?」と…

勿論ツネノリは喜んだ。

喜んだツネノリが勝手に身体を入れ替えたルノレに「お願い」と言っていた。


あのツネノリがお願いと言ったのだ。

幼い頃から自身の生い立ちからか私達に殆どお願いをしなかったツネノリが私にお願いと言った。あ、9歳の時に一度だけ「研究室を綺麗にして」とお願いされたな…「ツネノリ、人間には不可能と言うものもある」と言って断ったのを思い出した。


だがあのツネノリがお願いと言ったのだ。

ここで結果を出せなければ何の母親、何の知識かわからない。

私は俄然やる気になった。


「ルル、良かったね。

次元球だと見えにくい、後は僕が映すよ」

神はそう言うと映像を空中に出す。


映像の中ではツネツギがギガントダイルと言う魔物の口に入り込んで体内から斬り刻む。


「うぅ…、グロいの嫌だけどツネノリ居ないから私がやるしかない!

イメージ!必要最低限の威力で吹き飛ばす…


出来た!【アーティファクト】!」

そして出来た光の球を持つ千歳は「ツネノリの真似!【アーティファクト】!!」と言って足に風の力を用意して高速移動を実現させる。


「千歳は同時発動も出来るのか!?」

「ああ、あの子は常に色んな使い方をイメージしているんだ。ツネノリの高速移動を僕から密かに聞いていたから真似したんだろうね。


そしてギガントダイルの前まで疾走した千歳は口の中に光の球を入れる。

口が閉じた瞬間に「イメージ!球の位置を感じる!まだ早い、あと少し…」


何をすると言うのだ?

放ったアーティファクトの位置を把握?

私は何を見ている?


「今!爆発!!【アーティファクト】!!」

千歳がそう言うとギガントダイルの顔が爆発によって吹き飛ぶ。


「んな!?」

「ああ…、千歳は血を見たくないからって爆発物を好むんだ」


「うぇぇ…、グロいの嫌ぁぁ…。やっぱりカケラも残らないように爆弾増やすかなぁ…、ダメダメ、我慢!ツネノリの分まで働くんだから!無駄遣いは厳禁なの!!」

そう言った千歳は更に高速移動で次のギガントダイルを狙う。


これが千歳の戦い方…、何て言う自由な戦い方。

想像力と独創力…、何よりもこの力が素晴らしい!

もう一つの問題も、もしもの時の問題も千歳が居てくれれば解決する!!


「ルル、嬉しそうだね」

「はい!私の娘はとてつもない才能の持ち主です」


「だが、この量は厳しいはずだ…。単純な戦闘なら負けないが数で押されるとセンターシティに入られる」


「そこは大丈夫です。私達のツネノリが居ます」


「父さん!千歳!!遅くなった!」

そう言ってツネノリが2人の元に駆けつける。


「ツネノリ!?」

「大丈夫なの!?」


「うん、心配かけてごめん。皆がメリシアを諦めていないのに俺が諦めていてごめん

後は俺がやるよ。

残り10匹…、東さん!」


「何だい?」

横の神は話していないのに映像から声が聞こえてくるのは何とも不気味だ。


「昼みたいに力を貸してください!」

「今のツネノリなら必要ないと思うよ。

もし危なくなったら手を貸すよ。

やってご覧、今のツネノリなら問題なく全力を出せる」


「え?」

「ツネノリは昼に全力を出しただろう?身体はその時の事を覚えているから、きっと反動は来ないよ。

そして今の気持ちを覚えておくんだ。

素直に力を振るえばきっと最良の結果になるよ」


「はい!」

そう言ったツネノリは光の剣を二刀出す。


「父さん、さっきは殴ったりしてごめん」

「…仕方ないさ。次は盾で防ぐし殴り返すからな」

そういってツネツギが笑う。


「あ、ツネノリ」

「何?父さん」

「彼女の件で俺は急いでルルの所に行きたいんだ」


「わかった!すぐに片付けるよ!!」

「どうするの?」


「千歳、見ていてくれ。俺だってお前のように独創的に戦えるはずだ。硬さと鋭さに間隔を意識する。行くぞ!!」


ツネノリは足と腰に風の力を纏わせると軽やかにギガントダイルを目指す。

「時間をかけられないんだ!昼間みたいな戦い方は無しだ!!【アーティファクト】!!」


上空から勢いをつけてギガントダイルに向かって斬りつける。

剣は外皮に当たった所で止まってしまう。

「硬い!だが!!」

そう言うと剣からヴィィィィィイと言う音が聞こえて刃先が振動をする。

そしてそのままツネノリはギガントダイルを斬り伏せた。


「電気のこぎりか!?」

「ツネノリ凄い!!」


そのまま止まることなく残り9匹のギガントダイルを斬り伏せる。


「ふぅ…、父さん終わったよ」


「おう…お疲れさん」

「圧倒的…私達いらなくない?」


「圧倒!まさに圧倒です!!今日の巨大ボスはこれで終わりです!後は明日にご期待ください!これだけの力を持つプレイヤーを更に追い詰める強敵の登場にこうご期待ください!!」

魔女が空中に現れて周りを盛り上げると去って行った。


3人は千明の元に戻る。


「お帰りなさい」

「ただいまお母さん」

「千明、無事だな」


「ええ、ツネノリ…見事だったわよ」

「ありがとう。千明さ…」

「千明…何?」


「千明母さん…」

ツネノリが真っ赤になりながら千明を母さんと呼ぶ。


「あ、ツネノリがお母さんを母さんって呼んだ!」

「ツネノリ、ルルが聞いて居たらヤキモチを妬かれるな」

そうツネツギがツネノリに笑いかける。

聞いているわ。全く私をのけ者にしおって。


「ルル、ヤキモチの顔になっているよ」

「なってません!!」

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