第9話 父さん、母さんをよろしく!
俺は話の後、父さんと母さんを2人きりにした。
父さんが「お前にも考える時間が必要だよな。急に変な話をしてしまって済まなかった、俺を憎んでもいいんだ。だが母さんやツネジロウの事は憎まないでくれ」と変な心配をして来たので安心させるのに少し手間取った。
正直、少し困惑をしているのだが、困惑の大半は妹の存在と行動だ。
多分俺はこの世界で一生を終えるので妹に会う事はないだろう。
妹はいったい父さんの何が気に入らないのだろう?
母さんは父さんに向こうの世界で支える者が必要だと言っていた。
俺もそう思う。
いくら男であろうが歳を取ろうが勇者であろうが、心細ければ1人で生きていくのは大変なのだ。
きっと妹はその事を分からずにいるのだと思う。
父さんが完全無欠に見えるのかも知れない。
そしてそこは性別の差なのかも知れない。
俺は正直妹にいい気はしていない。
ヤキモチ等ではなく父さんを理解できずに困らせていると言うことが面白くない。
1日が24時間ある。
父さんは俺たちの所に8時間前後居るが、残りは全部向こうの世界に行く。
しかも週7日の内2日に関しては全て向こうに行っている。
これだけ父さんを独占しておいて、なぜ困らせるのだろうか?
もしもガーデンに来ることがあれば一度じっくりと話をしたいとも思う。
だが、それは父さんや母さんが望むものではない。
多分父さんは俺とチトセが揉めればショックを受けるだろう。
俺は父さんと母さんに許可を貰ってこのモヤモヤした気持ちをアーティファクト砲に乗せて撃ってみた。
やはり真っ直ぐは飛ばなかった。
家に戻ると撃つ直前に手がブレるからだと2人に言われた。
「ツネツギ、今日は早く向こうに行くか?」
母さんが父さんにそんな事を言う。
「いや、今日はセカンドのお披露目イベントだからな、オープニングのイベントが無事に終わったことを確認したら行くよ。確か4時過ぎだったかな」
「ではそれまではゆっくりしていると良い…」
「ああ」
「ツネツギ…」
母さんが悲しげな顔で父さんを見る。
「バカだなルルは…、例え千歳に二重生活を否定されたり止められたりしても、コレだけは止めないさ」
父さんは母さんが何を言いたいのかわかっていて優しく諭す。
「すまない…、お前の方が辛いはずなのに…」
母さんは涙目で父さんを見る。
「いや、俺が普通では無い事で迷惑をかけているんだから…」
父さんが母さんの肩を抱く。
もう後少しで父さんは向こうに行ってしまう。
何か言葉をかけよう。
「父さん…」
俺がそう言って、父さんが俺を見た時…それは起きた。
俺の足元から光が出てきて俺を照らす。
「なんだこれ!?」
「ツネノリ!?」
母さんが俺に近寄ろうとするが光に阻まれる。
「これは…、召喚の光!?バカな…「勇者の腕輪」は俺の腕にある…」
父さんが腕を見て困惑している。
「ツネノリ!それは召喚の光だ。
今からお前はどこかに召喚をされる。
そこに「勇者の腕輪」があれば身につけてでも身を守れ!
いいか?腕輪は剣と盾が出せる。
念じるだけでも出せるがアーティファクトと唱えれば更に威力は増す。
しまう時は「終わり」や「おしまい」と念じればしまえる」
父さんは少ない時間で要点をくれる。
「わかった!ありがとう!」
「ツネノリ!ツネツギ!ツネノリが!!」
母さんは必死だ。
俺の為に必死になってくれている。
「母さん、俺は大丈夫。必ず戻ってくるよ!」
本当はたまらなく不安だ、だが俺はせめて母さんを安心させたくてそう言う。
「ツネノリ!安心しろ、お前が何処に行っても俺がお前を見つけ出して助ける!
この家に連れ戻す!
また3人の日々を続けよう!!」
父さんの力強い声と眼差し。
なんて頼もしい。
これが普段見せない父さんの本質。
これに母さんが惚れたのだろう。
「父さん、母さんをよろしく!
俺も自分で出来る限りやってみる。
でもダメだった時は素直に父さんを待っているね!」
そう言い切った時に俺は光に飲まれていた。
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