退屈なのかな?

紀之介

何回目かの欠伸をした瞬間

「ふぁあぁ~」


 最近、眠くて仕方ない。


 どれだけ眠っても、眠気が醒めないのだ。


 だから、欠伸も止まらない。


「ふぁぁあぁぁ~~」


 今はデート中。


 だが、決して退屈している訳ではない。


 単に、眠たいだけなのだ。


「ふぁぁぁあぁぁぁ~~~」


 何回目かの欠伸をした瞬間、気配を感じる。


 口を閉じない様に気を付けながら薄め目を開けると、何と俺の口に 指が突っ込まれていた。


 横を歩いていた筈の曜子が、いつの間に前に回って 腕を伸ばしていたのだ。


 俺は、静かに口を閉じる。


 曜子の人差し指の第一関節を甘噛し、舌で指の腹を舐めたのだ。


 軽く歪む、曜子の表情。


 少し満足し、指が引き抜かれる前提で 軽く口を開ける。


 ところが、指は引き抜かれなかった。


 あろう事か、さらに深く入って来たのだ。


 素早く曜子は、頬を親指と中指で挟み、俺の口を 半開きの状態で固定した。


「─ あわわわ」


「僕ちゃんは…私とのデートが 退屈なのかな?」


 頭を左右に振って否定する。


「じゃあ、デート中に大欠伸を連発するの 止めようか」


 大きく頷く俺。


 頬を挟む 曜子の指の力が緩む。


「よろしい♡」


 満足そうに、手を引っ込めた。


 いそいそと隣の定位置に移動した曜子は、僕の腕にしなだれかかり 微笑む。


「じゃあ、デートを続けましょ♪」

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退屈なのかな? 紀之介 @otnknsk

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