第十九話 意外に家庭的な彼女
俺が作ったテストを解いてもらい採点すると良いとは到底言えないような点数が並んでいた。
「なるほどな。英語と数学が苦手なのか。」
「そうなんだよね。」
大体の傾向はこれで掴めた。そんな時、隣に座っている葵ちゃんが声をかけてきた。
「葵の宿題も見てお兄ちゃん!」
隣では葵ちゃんも宿題をしている。小学生らしいのだが感心する。
「葵!け、圭は私が勉強を見てもらうんために呼んだんだから、圭の負担になるかもしれなし自分で頑張ってみよっか!あとで私が教えてあげるから!」
「ヤダヤダ!お兄ちゃんに教えてもらいたい!」
「俺は大丈夫だよ!小学生の問題が負荷になるようなことは無いよ。」
「やったーーー!」
「ごめんね。わがまま言っちゃって。ちゃんとあんたの作戦に協力するから。それプラス今日、うちでご飯食べていかない?」
「え?誰が作るの?」
「うちしかいないでしょ。」
意外だった。教室の風貌はギャルに近いので料理など出来ないと思っていたのだが。なんだか志穂が急に家庭的な人間に思えてきた。
「なんか今失礼なこと考えてた?」
「まさか。......ご飯か、確かに終わるといい時間だな。でもいきなり俺の分も作れるのか?」
「それは大丈夫!二人も三人も変わらないから!それに、葵もあんたのこと気に入ってるみたいだし喜んでくれると思う。」
「分かった。それじゃあ、お言葉に甘えてご馳走になります。」
「おっけー!」
「よし、それじゃあ勉強会始めるか。」
「はーーい!!」
葵ちゃんが大きな声で返事をしてくれた。
~~
「めちゃくちゃわかりやすい......。あんた塾開けるレベルよ。これ。」
志穂は思ったよりも要領が良く、多分今まで自分に合っていない勉強法をしていたのだと思う。
「大袈裟だ。」
「お兄ちゃん、先生よりわかりやすい!」
「それは嬉しいな!ありがとう。」
「態度違いすぎでしょ。」
「それはそうだろ。」
大体、二時間ほど集中することができた。これを毎週続けて行けば成績は目標に届いていくと思う。
「それじゃあうちはご飯作るから、圭は葵と遊んでて。」
「お兄ちゃん何して遊ぶ?」
「なんでもいいぞ。」
すると、葵ちゃんは一度自分の部屋に戻りパズルみたいなやつを持ってきた。二人でそのパズルに興じていると
「できたわよ~。」
という声が聞こえてきた。
テーブルには、メインのハンバーグの他にも様々な料理が並んでいた。
「それじゃあ、いただきます。」
「いただきます!!!」
「はいどうぞ。めしあがれ~!」
控えめに言ってもめちゃくちゃ美味かった。どの料理も味付けが完璧だ。
~~~
「ご馳走様。」
「ごちそうさまでした!!!」
「は~い。圭どうだった?」
「めちゃくちゃ美味かった。毎日食べたいくらいだ。」
「ま、毎日って、きゅ、急にそんなこと言わないでよ!」
「いや、俺は事実を述べただけだ。」
なのに何故か、志穂はテンパっていた。
ご飯を少し食べてらゆっくりして、お暇することにした。
「それじゃあ、帰るわ。」
「え、お兄ちゃんもう帰っちゃうの。」
「夜遅くなると俺も親に怒られちゃうから!葵ちゃん、また来るから!」
「わかった!また来てね!」
「私ちょっとそこまで送るよ」
そうして二人で玄関からでた。
「今日はありがとね。葵の事も見てくれて。」
「別に問題ない。これも作戦のうちだし。子供は好きだしな。」
「うん。」
「ああ。ご飯ありありがとな。美味しかった。」
「来てくれたら作るよ。」
「それは楽しみが増えるな。」
これは本心から出た言葉だった。
「ここまででいい?」
「おう。」
「明日、うちの事、志穂って呼ばないでよ!!!」
彼女は笑いながら言ってきた。
「お互い様だろ。」
もう外は真っ暗で夜に近いが、不思議とあまり寒さは感じなかった。
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