第十二話 彼女と事件とその後。

「じゃあ桜先生早速命令してもいいですか?」


俺は彼女に尋ねた。もちろん拒否権なんてないが。


「......なによ」


「その下着を袋に入れて彼女の机の中に入れておいてください。謝罪文も入れてください。」


「なんて書けばいいわけ?」


「謝罪文です。その文章に、あなたのクラスの人間ではありません。という一文を追加して書いてください。」


「こんなので信じてくれるわけ?」


信じるわけが無い。だがあるものを入れるだけで信憑性が格段に上がる。


「五千円札一枚入れておいてください。そうすれば多少は信じてくれるでしょう。あとは俺が何とかする。これ以上お金の要求はするつもりはありません。」


「......わかったわ。」


彼女は職員室から財布と袋を持ってきて、五千円札と謝罪文を袋の中に入れて、桃山の机の中につっこんだ。


「これでいいんでしょ。」


「はい。これで明日からクラスは多少落ち着くでしょう。」


桃山の様子が直らなければ接触のチャンスが格段に減ってしまう。何とか、そうならずに済みそうだ。


「ねぇ進藤くん。もしかしてあなたも彼女のことが好きなの?」


「なら、文句ありますか?」


「ふーん。なるほどね。だからここまで......。」


彼女は一人納得した様子だった。



「それじゃあ、桜先生さようなら。」


これ以上ここにいる用はないので、扉に手をかけた。


その時、後ろから声が聞こえた。


「私はあなたの先生にはもうなれない。だから二人の時は桜でいいわよ。敬語もなしでいいわ。」


「わかった。自首するなよ。桜。」


俺は廊下に出て、玄関に向かった。


「えぇ。これから面白くなりそうだし、自首するなんてもったいないわ。」


そんな言葉が聞こえたような気がした。



通学路に咲き誇る桜はまだまだ満開だ。

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