第2話 定まらない者

さて、あなた達は自分が人畜無害な人間だと思っているだろうか。今誰にも害を及ぼさずに一人で生活を嗜んでいるのだろうか。恐らく、違う。あなたは今、人を殺している。

この世界はとても親切だ。僕にとっては。とてもわかり易いもの。例えば今あなたがネットで誰かに対して誹謗中傷を浴びせたとしよう。その言葉は実体を持たない人の形をした何かになる。それはあなたが批判した人の元へ行き、手に持った銃で心臓を貫く。撃たれたものは死にはしないが血が吹き出る。もちろんそれは撃たれた本人にもわからないし、周りの人たちにもわからない。ただ、そんなことを繰り返しているといずれ撃たれすぎた人は死ぬ。言わば、精神をすり減らす弾を体に打ち込まれているようなものだ。それが、僕には見える。きっと他の人には見えない。ときには、悪意のない言葉ですらも人を殺す。それを理解して生活している人間はいったいいくらほどいるのだろう。それにこれは攻撃するのは本人ではなく代役なのでたちが悪い。言葉が人を殺しに行くくらいだったら自分が殺しに行ったほうがまだいいのではないだろうか。まあでも、殺していることすら知らない人たちにとっては知ったことではないだろう。

僕も知らないまま生きていけたらもう少し楽な人生を歩んできたかもしれないな。

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