掛け持ちバイト
土曜日の日。ケンは酒屋で働きショーケースを持って運んでいた。
「よいしょ!」
すると酒屋の店主のおじさんが声をかけてきた。
「いやーカヲルさんの知り合いとはいえこんな働く子が来てくれるなんて嬉しいね」
「ありがとうございます」
うんうん。とおじさんが頷いていた。
「他にも違うところで働いてるんだっけか?」
「はい」
ここの酒屋以外にもスーパーにコンビニ。ファミレスとそして今も働いている喫茶店。どれもマスターが紹介してくれた場所だ。
するとおじさんが背中を強く叩いてきた。
「はっはは! 若いのに大したことだ! 今日はそれだけで十分だからな」
手を振っていてその場を去って行った。
「はい!」
バックヤードにショーケースを置いてここの仕事は終わりだ。
「次は喫茶店だな」
エプロンをロッカーにしまい喫茶店に向かって行った。
「こんにちは」
挨拶するといつものマスターの姿があった。
「いらっしゃい健太ちゃん。最近どう無理してないかしら」
「いいえ。楽しいですよ」
少し辛いとはいえこれもアリスのために働けることが物凄く嬉しいかったからだ。
そう沢山稼いでアリスを色んな所に連れていく。例え辛かろうとも自分の体にムチを打って働く。
「お疲れケン」
誰かに呼ばれ振り向くとテーブルの方にソウスケと美咲カップルが座っていた。
ケンはソウスケの方に近づく。
「いらっしゃい」
すると美咲が首を傾げていた。
「ケンってファミレスでバイトしてなかった? 私見たんだけど」
そうえいば数日前に美咲を見たような気がしたかもしれない。人が多すぎて手を回すことしか考えてからな……。
「そうかもしれないですね。まあ沢山バイトをしてるので」
すると美咲がため息を吐いていた。
「バイトはいいけど、少しはアリスのそばに居てあげたら?」
「そばに居ますよ。一緒にご飯とか食べてますし」
昨日は夕飯は食べれなかったけど。今朝は一緒に食べれた。
するとまた美咲がため息を吐いてこっちに聞こえない小さな声で言っていた。
「そうじゃないって……アリスが困ってるに駄目ね。これ」
するとマスターが声をかけた。
「じゃあ健太ちゃん。バイト。お願いしてもいいかしら?」
「あ、はい。じゃあまたな」
二人に手を振り着替えるためにバックヤードに向かった。
◇
ケンが店の奥に入っていくのを見てソウスケは首を傾げていた。
「あれは周りっていうかアリスの気持ちに気づいてないな」
美咲も頷く。
「そうね……。あの子が困っているのにね」
数日前アリスが一人で暗い顔をしながら帰っていて話を聞くと、知り合いの子がケンに告白をしたのを目撃したという。
ソウスケもケンが告白されたって聞いていたけどまさか学校の友達でここの喫茶店で働いている茉莉奈だとは思わなかった。
美咲と茉莉奈はクラスが違うがたまに遊んでいる仲であったが以外としか言えなかった。
ソウスケは本当に心配な顔をしている。
「俺が余計なことを言わなければ良かったかもしれないな……」
「ソウスケ……」
美咲は首を振った。
「ケンが決めたことだから仕方ないけど。友達が困っていたら助けてあげましょ」
「そうだな……」
◇
バックヤードに着替えをしようとしたケンがロッカー室に向かうと茉莉奈に会った。
「健太さんこんにちは」
「こんにちは今日もよろしくお願いします」
茉莉奈は頷いた。
「はい」
茉莉奈が先にホールに向かいケンは制服に着替えて。その日も頑張って接客をした。
バイト終わりの帰り道。ケンはケーキワンホールを持って歩いてる。
前々からマスターにケーキの注文をし今日、持ち帰ることにした。
「アリス喜んでくれるかな?」
最近妙にアリスの様子がおかしく気分が落ち込んでいるようだから。せめてケーキだけでも渡して笑顔になって欲しい。
ズキッ――!
頭のどこかで痛みが走った。
「……ん?」
痛みのところを触るが何もない。
「まあいいか……」
そのままアリスの待つアパートに向かった。
扉を開け中に入る。
「ただいま――」
入った瞬間視界が歪んだ。
あれ? なんかおかしいな……。
なぜか膝が地面についていた。
力がはい、ら――。
その瞬間。暗闇が襲ってきた。
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