縁結び

 離れたアリスと連絡出来て良かった……。

「ふぅ……それじゃあ行きましょうか」

「あ、はい……」

 茉莉奈が頷いてスマホをしまって一緒に神社の方に向かって行った。

「あの健太さん」

「ん? どうしました」

「さっき縁結びって話していたのってあれは……」

「アリスがアニメを見ていたら影響されちゃって欲しい。可愛い妹ですよ」

 一瞬彼氏とか好きな人が出来たのかと思ったら驚いたけど。いつかアリスも好きな人が出来てしまうんだな……。

 これが兄心なんだなと改めて実感する。

「あぁ。良いな……」

 階段を登っている最中に茉莉奈がつぶやいていた。

「何が良いんですか?」

「え!? あ、その……!」

 振り返ると茉莉奈があたふたとしている。

「えっと……。縁結びを一緒に買いに行けるなんていいなって」

「まあ、アリスが欲しいからな」

 するとなんでか顔を膨らませていた。

「また。アリスさん……」

 神社に到着しすると誰も居なかった。

「まだいないな」

 階段の方を見つめてみるが誰かが上がってくる気配すらない。

「少し待つか……」

 すると茉莉奈が服を引っ張ってきた。

「ん、なんですか?」

「いえ、その……」

 少し顔が赤い。それもそうか急いで階段を登ったから息が上がってるのかもしれない。

「すいません。喉乾きましたね飲み物買ってきます……」

 階段を登る最中に飲み物が売ってたから戻ろうと思ったら茉莉奈に止められ首を急に左右に振っていた。

「い、いえ! 飲み物は大丈夫です!」

 あれ? 飲み物じゃなかった?

 すると茉莉奈は神社にある隣の建物に指をさした。

「あ、あそこに行きたいです」

「あそこって……」

「お守りとか売ってるところです」

 そうかが縁結びとか売ってる場所か。

 でもまだアリス来てないしな……。

 階段の方を再度見るが誰もいなかった。

「う~ん」

 すると茉莉奈が服を何度も引っ張ってきた。

「在庫とか確認しましょう。もしかしたら売り切れってなってるかもしれないですし妹さんが悲しむかもしれません」

「あー確かにな」

 アリスががっかりする姿は見たくはない。

「それじゃあ確認だけでも」

 すると茉莉奈が笑顔で頷いた。

「はい! 行きましょう」

 お店に近づくと巫女さんが笑顔で微笑んでいた。

「いらっしゃいませ」

 本当に色んな種類がある。交通安全のお守りに健康第一のお守り。学問のお守りまである。

「すいません。縁結びのお守りってありますか?」

「縁結びですか? 少しお待ちください……」

 巫女さんがしゃがみ込むと二つ赤と青のお守りを持ってた。

「こちら縁結びになります。ってカップルの方ですか?」

 なぜか茉莉奈が顔をさらに真っ赤になっていた。

「あ、いえカップルじゃあないです。バイト仲間でさっき一緒になっただけです」

 すると巫女さんも苦笑いになっていた。すいません余計な気を使ってしまって。

「妹が縁結びを欲しいがってたので一個ください」

「そうなんですか? いいお兄さんですね。この縁結びは片思いの相手。青い縁結びを男性に渡して。赤い縁結びを女性に渡せば恋が実ると言われています」

 へーそうなんだ。縁結びってよく聞くが知らなかったな。

「それを一つください」

 すると茉莉奈も手を上げていた。

「わ、私も一つ下さい」

「え?」

「はい。ありがとうございます」

 こうして茉莉奈も買った。

「まさか茉莉奈さんも買うとは記念にですか?」

「…………」

 すると急に黙ってしまった。

「茉莉奈さん?」

 なんだ急に。

「……これを買ったのは理由があるんです」

「え、はい」

 まあ理由なんて人それぞれだから。

「その……健太さんて今、彼女さんとかい、居るんですか?」

「え? いないけど……」

 なんでこんな事聞くんだろう?

 すると彼女はさっき買った袋から出して一つ俺の手に青いお守りを渡した。

「これ……」

 これって縁結びだよな……。

「なん――」

「好きです! 健太さん! 私と付き合ってください!」

 

 ……好き? え、彼女はそう言ったのか? 理解が追い付かない手元にはさっき買ったお守り……これって渡すと恋が実る…………え!?

「待ってくれ! 付き合うって言ったか?」

「……はい。言いました」

 彼女は自信のそこから頷いていた。

 向こうの屋台の方から音楽が聴こえていた。

 付き合う…………。

 ふとなぜかアリスの顔が浮かんだ。

「ごめん。俺は付き合うことは出来ない……」

 茉莉奈の頬から自然と涙が溢れていた。

「……っ! うぅ!」

 メガネを外し拭いていた。

「……私じゃダメですか?」

「ごめん……俺には今、笑顔をする相手が居るんだ」

「――っ! それってアリスさんですか?」

 まだ会場の方から声援が聴こえていた。

「そうだよ。俺はアリスを笑顔にするって決めたんだ。だからごめん……」

 そう、中学でアリスの兄になるって決心したころから決めていたことだ。アリスの泣いた顔じゃなく笑顔を俺がそばに居るって。

「どうして、そこまでアリスさんのことを大事に出来るんですか? 妹だからですか?」

「……そうだ。妹だから兄になると決めていたことだ。だから返事はごめん」

 茉莉奈は泣きながら階段の方を降りていった。

 ごめん茉莉奈さん……。


 数分後ケンも階段から降りるとアリスが立っていた。

「ケンにぃ……」

 すると視線をそらしていた。多分告白の事を聞いてしまったんだろう。

 ケンはお守りをアリスに渡してその場を去ろうとライブの終了のお知らせが鳴り響く。

「……帰ろう」

 俺は兄として家族としてそばに居るって決めていたんだ……。

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