番外編 茉莉奈の初めての恋


 茉莉奈は一人ショッピングに来ていた。

「なにもすることないな……」

 バイトは休みで茉莉奈はブラブラと店を見に来ていた。

 友達に連絡しても彼氏とデートとかで一人で買い物をしている。

「私もデート健太さんとデート出来たらな……」

 頭の中で理想のケンを思い浮かべる。

「やあ、茉莉奈」

「け、健太さん。これから私と

「勿論さ君に似合う素敵なプレゼントを用意するよ」

 そう言って前歯を、輝かせながら手を握ったり。

「きゃあぁ! 健太さんにそんな事言われたい」

 あの日健太さんに手を握ってくれて嬉しかったな……。


 ケンと出会ったのは高校一年の3月の中間で学校で助けて貰った。

 茉莉奈はクラスに届けるプリントを持って廊下を歩いていた。

「」

階段を数段登って次に足を置こうとした瞬間つま先がズルっと滑った。

「え?」

 足を踏み外しそのまま踊り場まで落ちていく。

「イタタッ……」

 尻もちをついた瞬間メガネが外れて視界がぼやけた。

「メガネどこ行ったの……」

 手探りを探すが近くにはないみたい。

 でも、近くにあって体重をかけたらレンズが割れたなんていつもの事だから動こうにも動けなかった。

 すると誰か男の子人が声をかけてきた。

「あの……大丈夫ですか?」

「え!? はい。大丈夫です!」

 すぐ大丈夫って言ってしまったけど大丈夫じゃない。

 視界が悪いのと同時にすねの方がズキズキとして痛い。さっき階段で擦り傷を起こしたんだ。

「本当に大丈夫?」

「はい。大丈夫ですので……」

 茉莉奈は立ち上がるが見ている方向が定まらずバランスを崩してしまった。

「うわ!」

「危ない!」

 誰かが茉莉奈を抱きしめられ状況が読み込めなかった。

 え!? なに急に?

「ふぅ……」

 少し傾けられ真っ直ぐにされ手を掴んできた。

「メガネ落ちていましたので気をつけて下さい」

 メガネ?

 手の感触を確かめてみると丸みとフックもある。恐る恐る欠けてよく見てみると自分のメガネだった。

 助けてくれた人の顔を見てみると普通の男子生徒だった。

「あ、ありがとうございます」

 すると後ろから女性の人が声をかけてきていた。

「ケンにぃ帰ろう」

 噂は学校で聞いていた。美人で綺麗の人が学校にいるってこうして間近で見てみると本当に綺麗でどう表現していいのかわからないほど綺麗だった。

「アリスも手伝ってくれないか?」

「うん。わかった」

 プリント?

 床の方を見てみるとさっき持ってたプリントで散乱していた。

「あわわ、すいません!」

 慌ててプリントを美人の人も拾って終わった。

「本当にありがとうございます!」

 茉莉奈は二人に対して頭を下げる。

「いえ。それと保健室に一緒に行きますか? 血が出てますし」 

「あ、いえ。一人で行けますので」

 茉莉奈はまた頭を下げると二人は手を振って歩いた。

「ケンにぃ今日はバイト?」

「そうだよ。新しい子が入るから急がないと」

 二人は去っていった。 

「女の人、美人だったな……」

 仲良くしてる感じからして付き合っているのかな?

「早くしないとバイトに遅刻しちゃう!」

 今日は初めての喫茶店のバイトで初日から遅刻は大変だ。

「急がないと!」

 教室にプリントを置き鞄を持った。

 学校から喫茶店までずっと走っていたから息が苦しい……。

「はぁはぁ……」

 息を整えて中に入った。

「すいません! 遅れました」

「あら」

 オネエ口調の店長が笑ってくれた。

「こんにちは」

 後ろを振り返るとさっきプリントを拾ってくれた男子生徒だった。

「あれ? あなたは……。あ、まだ保健室行ってなかったんだ」

 そういえば遅刻しないようにって思って足のことは忘れていた。

「すいません……」

「それじゃあここで治療しますね。マスター休憩室使わせて下さい。彼女の足を消毒したいので」

「いいわよ健太ちゃん。それとカオルって言って頂戴」

「わかりましたカオルさん。それじゃあいきましょうか」

「は、はい…」

 小部屋に入りケンが消毒をしてくれた。

 こんな優しくしてくれてたけど学校に美少女とはどうゆう関係なんだろうもしかして彼女とか?

「健太さんはさっき拾ってくれた女の人って彼女なんですか?」

「ん? あぁ、アリスか。彼女じゃないよ。妹なんだけど間違えられるんだよな」

「え!? 妹さん」

 顔は似てない。それと髪も女の人は銀髪だから妹は流石に兄妹とは思えなかった。

「それじゃあ。健太さんは今は彼女とかいないんですか?」

「いないですね。俺が彼女とか作る気はないですから」

「そうなんですか」

 あっという間に消毒が済んだ。

「よし、終わり。それじゃあ仕事始めようか」

「その宜しくお願いします」

 茉莉奈は頭を下げた。

 それからはケンが指導と荷物が重いときは運んでくれたりと優しくてやり方を丁寧に教えてケンに惹かれていった。

 

「健太さんと恋人になれますように」

 そんな神様にお願いする茉莉奈だった。

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