親族
アリスは帰国後両親の葬式を教会で行った。
親族も来てくれて両親のために泣いてくれた人もいた。
埋葬されその後親戚たちが話し合っていた。
「アリスはどうするか?」「君のところで預けたらどうだ?」「私は嫌よ」
話がどんどん進んでいく。
大体40歳ぐらいの男性が言った。
「それじゃあ施設に預けよう。誰も無理だというなら仕方がない」
施設? 待って、それじゃあケンにぃとはもう二度と会えなくなっちゃう……。そんなの嫌。
アリスは立ち上がり親戚たちに自分の気持ちを言った。
「待って! 私を家族にしてくれるって言ってくれた人がいるの! 勝手に話を進めないで」
「か、勝手には決めていないさ。大体? 誰が君にそんなことを……」
「ケンにぃよ! 私を家族に妹に迎えてくれるって言ってくれたの! だから私は日本に住むの!」
おじさんは首を傾げていた。
「日本? そうか、確かアリス。君は日本にホームスティしていたんだったか。けど本気なのかい?」
覚悟は決まっていた。お風呂のときに両親に背中を押された瞬間に決めたことだから。
「もちろん。だってそう約束したもの」
「……そうか。わかった、手続きはこっちしよう」
「っ! ありがとうおじさん」
「それじゃあ荷物とか合ったら持って行ってくれ……」
おじさんは手を振り親戚はまだ話し合っていたけどアリスはその場を離れた。
両親が映っている写真。お母さんとお父さんがくれた人形。色々な思い出が蘇ってくる。
パパ、ママありがとう大好き……。
涙が零れながらもアリスはその二つを鞄に入れて親族に頭を下げた。
「パパとママのために来てくれてありがとうございます!」
親戚一同がビクッてなっていたけどおばさんだけ手を振ってくれた。
「凄い礼儀がわね。日本に住んだ影響かしら」
「さあな。まあ、あの子も親と同じく日本が好きみたいだな」
バスに乗ってこれから日本に帰るため飛行機に向かった。
ふと紙袋が目に留まった。
両親の葬式でバタバタしていて見ていなかった。
中身を見てみるとアニメの円盤と漫画だ。
前に勧められてみたけど内容が分からなかった。
「せっかくお兄ちゃんが貸してくれたんだから見てみようかな……」
袋に入っていたDVDレコーダーを取り出しアニメディスクを再生する。
見てみると最初は妹が起こしてくれてご飯を一緒に食べる所から始まって、ほのぼのとしていたけど。妹は本当の兄弟じゃなく両親が他界した影響で記憶が失ってしまったのを思い出した。
アリスの心になにかが波打った。
このヒロインと自分は同じ環境だと思った瞬間ヒロインに感情移入していった。
頑張って……。頑張って……。
苦悩する妹だけど兄が支えて、やがて兄は言った。
「俺が本当の家族なる!」
その言葉がアリス胸をざわつきだした。
胸のところがドクンドクンとなり響いている。
今までとは何かが違う。家族として会えたとかではなく心臓の鼓動が静まり返らなかった。
ケンのことを思うと顔が熱くなっていく。
この感情は何なんだろ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます